スキルUP

旅をせよ!「体験」にまさる「学び」はない/レア力で生きる(1)

誰の真似でもない自分だけの「好き」を追求しながら、競争のない領域で生きていくための力「レア力」を身に付けよう! 小宮山 利恵子氏の著書『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』から、今こそマジョリティを抜け出す方法を伝授します(第1回)。

01 旅をする 〜未知の世界を体験する〜

今までの人生で、特にこれといったネガティブな要因もなく、自分は人と違うと思えるレアな体験をしたことがない普通の人間だと思う人もいるでしょう。

そういう人も、コンフォートゾーン(居心地のいい楽な場所)から抜け出すことで、世の中の「常識」や「普通」のバイアス(偏見)を外すことができます。そして、自分を高めることができるのです。

今いるところとは違う未知の世界へ飛び出せば、今まで当たり前だと思っていた考え方、働き方、生き方が絶対ではないことがわかります。人間の多様な可能性に気づかせてくれて、自分を新たなフェーズ(段階)へと導いてくれるのです。

コンフォートゾーンを抜け出す手っ取り早い方法は、まだ見たことのない世界を旅することです。しかも、できるだけ日本とはまったく文化の異なる国を体験したほうが学びは多いものです。

そうすると、自分の「常識」が通用しない場面に出くわします。自分の「当たり前」のバイアスが外れていきます。そして、世界の広さと自分の世界の小ささに気づくのです。

私の初の海外旅行はベトナムでした。

大学時代にアジア諸国について学んで興味を持ち、海外に行ってみたくなって、大学1年の時、バイトで貯めたお金を使ってひとりでベトナムを1週間旅行したのです。

ベトナムを選んだのは、ベトナム戦争について書かれた本を読んで、その土地をどうしても自分の目で確かめたくなったのがきっかけでした。もちろん、戦争から30年以上経っていたので、爪痕を知ることができる場所が限られているのはわかっていました。それでも、博物館でも建造物でもいいからこの目で見て、現地の人に話を聞いて、ベトナムの歴史に直接触れてみたかった。そう思いはじめたら、居ても立ってもいられなくなったのです。

実際にベトナムを旅してみてわかったのは、自分の目で見て現場を体験する以上の学びはない、ということです。

ベトナムに関する知識を、本や映画でいくら増やしても、その土地に行かなければ現地の空気を感じることはできません。やはり、その場所へ行って、自分の目で見て、耳で聞いて、手で触れて、確かめてみると、他人事だったことが身近に感じられます。

ベトナム戦争についても、現地の博物館で見た写真や映像の生々しさは強烈な記憶として残りました。人間の残虐性を示す虐待や拷問の数々、犠牲になった子ども達の様子も一生忘れることはできません。

ストリートチルドレンのことも、そういう子ども達がいると聞いて知ってはいても、実際に自分が、裸同然の格好をした子どもからお金をせびられるとどんな気持ちになるのか? これは行った人でなければ決してわからないことです。

また、日本の「常識」や「当たり前」がひっくり返ったのは、インドでした。

インドのチェンナイ国際空港のトイレには、トイレットペーパーがありませんでした。在庫が切れているのではなく、もともとトイレットペーパーを使う習慣がないのです。あるのは水道とバケツだけ。それでなんとかするしかないわけですが、たまたまポケットティッシュの持ち合わせがあったので、事なきを得ることができました。しかしこの時は、驚きよりも戸惑いのほうが大きくて、かなり焦りました。

国際空港ですから、他の外国人も同じような体験をしています。インドに旅した経験がある人と話す時は、必ずと言っていいほどこのトイレのことが話題になります。

同じくインドでは、高速道路を牛が逆走してきたこともありました。車でも人間でもなく、牛です。どうすることもできないので、牛が通り過ぎるのを待つしかない。この時は息子も一緒だったので、親子で呆れ返って笑ったものです。

また、インド人は、何か聞かれて「YES」と答える時、首を横に振ります。日本とはまったく逆なのです。ですから、現地の人が「YES」と言っているのを、間違って「NO」ととらえてしまうと、とんだトラブルに巻き込まれてしまうのです。

こうした経験から、私にとって学び多い旅とは、知らない世界を知ることであり、その土地でしかできない体験や学びを楽しむことが旅の目的となりました。

ベトナム旅行から現在まで、仕事とプライベートを合わせて、世界19カ国、43都市を旅して思うのは、生き方も考え方も働き方も、人間の可能性は無限大だということです。ところが、日本人は言語の壁によって国内しか見ていない人が多いため、日本人だけの「普通」から抜け出せなくなっている人があまりにも多い。

そういう人こそコンフォートゾーンを抜け出して、未知の世界を体験することで、今まで縛られていた価値観を解き放ち、自分の可能性を発見してほしいのです。

もちろん、旅先ではいいことばかりではありません。

以前、飛行機の席がオーバーブッキングされ、予定の便に乗れなかったことがありました。その時は、1便あとの飛行機に乗れたのですが、焦りました。また、スーツケースが世界一周したこともありました。

私は韓国のソウルから帰国して、東京に戻ってきているのに、スーツケースだけが、「今、ポルトガルのリスボンにあります」と言われ、なんでそんな遠くまで運ばれてしまったのか途方に暮れたものです。

海外旅行中に風邪をひいて、現地の病院で点滴を打ってもらったこともあります。

サンフランシスコの治安が悪いと言われている地域を歩いている時、自転車に乗っている男性にスマホを盗まれたこともあります。

結局、その人は、近くを歩いていた巨漢の男性が捕まえてくれたので、スマホは戻ってきたのですが、自分の平和ボケを猛反省した出来事でした。

未知の世界に飛び込むと、失敗やトラブルはつきものです。けれども、そういった経験を乗り越えるたびに成長できます。臨機応変、必要に応じた対処ができる人ほど、社会からも求められるものです。

これは旅に限らず、すべてにおいて言えることです。

それは、自転車を漕ぎ続けていれば倒れないのと同じで、行動し続けていれば倒れない、つまり失敗にはならないからです。

『トム・ソーヤーの冒険』を書いたマーク・トウェインがこんな言葉を残しています。

「旅することは先入観や偏見を壊してくれる」

経営コンサルタントの船井幸雄氏も、こう発言しています。

「情報量は、移動距離の2乗に比例する」

知らない世界で新しい体験をすればするほど、自分の価値も高まっていくのです。



小宮山 利恵子

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】小宮山 利恵子(こみややま・りえこ)
スタディサプリ教育AI研究所所長。国立大学法人東京学芸大学大学院准教授(教育AI研究プログラム)。2018年、米国国務省IVLP修了。

【書籍紹介】『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA)

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