スキルUP

世界は広い! 留学は意外な自分に気づかせてくれる/レア力で生きる(2)

誰の真似でもない自分だけの「好き」を追求しながら、競争のない領域で生きていくための力「レア力」を身に付けよう! 小宮山 利恵子氏の著書『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』から、今こそマジョリティを抜け出す方法を伝授します(第2回)。

02 留学する ~海外生活で好奇心と向上心に火がつく~

旅の経験をさらに深めるのが留学です。私が初めて自分の価値観がガラッと変わるほど影響を受けた海外経験は、大学院時代の韓国留学でした。

大学院でアジア太平洋の歴史を研究していたこともあり、日本語以外のアジアの言語を1カ国語ぐらいは修得したかったため、最初はいつか留学できたらいいな、くらいにしか考えていませんでした。

というのも、まさか自分が留学できるとは思っていなかったからです。大学院でさえ日本育英会から奨学金を借りて進学したくらいですから、経済的に難しいだろうと半ば諦めかけていました。

ところがしばらくして、研究室の先生が、東アジア諸国との交換留学制度があって、韓国の大学院が募集していることを教えてくれたのです。私が、アジアの他の国に留学してみたいと普段から話していたことを、覚えていてくださったのでしょう。

そこでこの時もまず、何か奨学金がないか調べました。すると、韓国国際交流財団が給付している奨学金があったのです。もちろん、一定の条件を満たして試験に受からなければいけなかったので頑張りました。

他に何人ぐらい応募したのかわかりませんが、運良く合格し、約8カ月間の留学費用の70万円ほどを奨学金として給付してもらえることになりました。

しかし、ハングルはまったく勉強したことがありません。聞くこともしゃべることもできない状態での留学でした。韓国の文化についても知りませんでしたし、知人もいなかった。歴史は少し学んでいましたが、それ以外の知識はほぼゼロのまま、単身留学したのです。

私にとっては、むしろそれが良かったのかもしれません。何もわからない世界に飛び込んだことで、好奇心と向上心に火がつき、刺激的でスリリングな日々を体験できたからです。

韓国では寮生活をしていたのですが、食事に毎日出るキムチを食べ過ぎて、お腹を壊して入院したこともありました。その時も、「辛いものがもっと食べられるようになれば、お腹を壊さなくなるはず」と、前向きに受け止めたものです。

また、日本と違って韓国は女性の主張が強いこと。男性は全員徴兵制で軍隊に入隊するため、恋人と離ればなれになって別れてしまう人が多いことも初めて知りました。電車に乗れば、ホームレスや障害者の方が物乞いをして回っています。市庁舎前では、毎週末のように大規模抗議集会が開かれています。

そういう文化の違いを知れば知るほど、すぐ隣の日本と日本人のことを客観視できるようになります。国民性の違いがはっきりとわかるのです。

なぜ、日本では、ホームレスや障害者などの社会的弱者が、電車に乗っている姿を見ることが少ないのか? 韓国の人々は、なぜあれほど自己主張ができるのか。どんな理由でデモをしているのか。日本人がデモもせず、我慢ばかりしているのはなぜなのか……。

さまざまな疑問が湧くたびに、人に話を聞いたり、自分でも調べたりして、日本と韓国の歴史や文化の違いを深く考えるようになりました。

留学中、韓国の新聞に、日本と韓国の関係性についてまとめた意見を投稿して、掲載されたこともあります。その時初めて、自分の考えをアウトプットすることの大切さも知りました。まったくハングルがしゃべれなくても、現地で学べば早く修得できることもわかりました。

議員秘書時代は、チュニジアにも留学しました。

きっかけはシンプルで、「アフリカ大陸に行ったことがないから」。この時も、奨学金を利用するため探したところ、チュニジア政府が募集していることを、ネットで知りました。アラビア語ができなくても試験に受かれば奨学金を給付してもらえるというものです。

しかも、日本人の募集人数は8人。同じくアフリカに興味を持っていた友人と、「8人のうちふたりならいけるかも」とチャレンジしたところ、見事ふたりとも合格しました。おそらく、応募した人数もそれほど多くなかったのでしょう。

2カ月間のチュニジア留学は、サバイバルの連続でした。

現地に入って間もなく、お腹を壊してしまった私は、激しい嘔吐と下痢に襲われたのです。慌ててタクシーに飛び乗って病院へ行き、英語とアラビア語の辞書片手に医師に症状を訴えたのですが、フランスの植民地だったチュニジアでは英語が通じません。結局、辞書片手に話したつたないアラビア語で、なんとか治療を受けることができました。

また、学生寮にはクーラーがなく、熱風による気温が60度近くまで上がった時はどうなることかと思いましたが、人間そう簡単には死にません。自分の意外な順応性の高さにびっくりしたものです。

留学先の学校で一緒に学んでいた人の中には、イギリスやスペインから来ていた人たちもいて、日本と違い、近隣諸国を自由に行き来している人たちの異国との距離の近さも感じました。

アラブの大富豪と思われる人たちは、毎日のように高級ホテルのプールで昼間から遊んでいました。チュニジア市街は、お店で冷たい水も売っていないほど不便なのに、欧州諸国の観光客の避暑地としても人気なのです。

最初はそれが不思議でしたが、海沿いの美しいビーチやシディ・ブ・サイドなどの世界遺産を訪れてみて、その理由がわかりました。暑くても、訪れる価値がある場所だと実感できたのです。

そんな体験のひとつひとつが、私にとっては驚きの連続で、日本とまるで異なる世界を、目を見開くようにして観察していました。

そこで毎日のように思っていたのは、自分で現場を体験する以上の学びはないということ。そして、人間には多様な生き方があるということです。日本のように、何もかもが便利で快適な暮らしでなくても、私たちはその土地に合った生き方ができるようになっている。そんなことも実感しました。

答えは必ず現場にある、とはよく言ったもので、世の中は自分で体験してみないとわからないことだらけです。

韓国とチュニジアの留学で、私の考え方も大きく変わりました。経済的な理由で、最初から「どうせ無理」と諦めていたら、留学することなどできませんでした。

世界は広い。

そしてこの世界には、叩けば開くドアがたくさんある。

これからは、目の前にあるドアを片っ端から叩いて生きていこう。

そう心に決めたのです。

学びとは、ただ知識を覚えることではありません。自ら足を運び、人に会い、話を聞き、体験し、考える。その一連の流れで初めて学びになる。そういう意味で留学は、レア力を鍛える近道と言えます。



小宮山 利恵子

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】小宮山 利恵子(こみややま・りえこ)
スタディサプリ教育AI研究所所長。国立大学法人東京学芸大学大学院准教授(教育AI研究プログラム)。2018年、米国国務省IVLP修了。

【書籍紹介】『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA)

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