スキルUP

転職を恐れない! 「本当にやりたいこと」のために/レア力で生きる(4)

誰の真似でもない自分だけの「好き」を追求しながら、競争のない領域で生きていくための力「レア力」を身に付けよう! 小宮山 利恵子氏の著書『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』から、今こそマジョリティを抜け出す方法を伝授します(第4回)。

04 転職する 〜やりたいことをやるための転職〜

転職するいちばんの目的は、より好きなこと、やりたいことのために実績を積むことです。もちろん、収入や待遇の良さも大事ですが、やりたくもない仕事を続けていると、いずれ精神的な不満が出てきます。

4年半にわたって議員秘書の経験を積み、政治の世界のこともある程度理解した私は、そろそろ本願の教育の世界に入りたい思いを募らせていました。

ちょうどその頃、夫と出会って1週間でスピード婚約したことも、秘書を辞めるいいタイミングでした。ただ、秘書を辞めて29歳で子どもを授かったため、産後しばらくしてから転職活動を始めることになりました。

議員秘書の経験があると、やはり秘書としての採用がいちばんの近道です。最初は、教育の分野でそういう仕事がないか探しました。

ところが、入りたかったベネッセコーポレーションは中途採用の枠がなく、その他も、なかなかこれといった就職先が見つかりませんでした。

秘書は秘書でも、議員秘書をしている女性は、普通、永田町の中でぐるぐる職場を替えることはあっても、外の社会に出ることはまずありません。

「議員秘書」にどのような能力があるのかわからない転職会社にとっては、未知の存在だったことも影響していたかもしれません。女性でまだ小さい赤ちゃんがいることも条件としては不利で、応募してもなかなか決まりませんでした。

人材派遣会社も、パソナ、リクルートエージェント、インテリジェンスなど何社か登録して、秘書や事務の募集をしている会社を10社ほど受けては落ちていました。もう転職は無理かもしれないと諦めかけた頃に、最初に希望していたベネッセが、秘書の募集を始めたという話が舞い込んできたのです。

教育の分野を目指していた私にとって、ベネッセはもっとも働きたい会社でした。迷うことなく試験と面接を受けると、すぐに採用が決まりました。後で聞いた話によると、議員秘書の経験に興味を持ってもらえたそうです。変わり者と思われても、面白がられても、社会人1年目から議員秘書をやってきて良かったと、内心、ガッツポーズを決めた瞬間でした。

ベネッセの福武總一郎会長(当時)は、「経済は文化の僕だ」とよく言っていました。瀬戸内国際芸術祭も、新潟県十日町の大地の芸術祭も、福武会長個人の意向で始まったプロジェクトで、観光庁から表彰もされた方です。その言葉を聞くたびに、人間ひとりひとりの創造性や感受性ほど、世の中で価値あるものはないのだ、ということを教えられました。

「木を見るだけではなく森を見よ」という言葉も、会長からよく言われて、今でも気をつけるようにしていることです。

私は、あまり後ろを振り返ることなく、やりたいことだけをやってきました。でも、ある部分では、自分のジグソーパズルを見ながら、ここが足りないから埋めよう、と思うこともあります。

そのように一歩引いて全体を見渡すことは、普段は意識していないけれども、気がついた時にやる習慣は身についているのです。それも今思えば、福武会長の「木と森の話」の影響かもしれません。

福武会長は、ユーモアあふれる人でもありました。ある大事なパーティーに出席することになった時、ポケットチーフを忘れてしまった会長から、どこかで買ってくるようにと言われたことがありました。

私はすぐに探し回りましたが見つからず、そのことを伝えると、さりげなく紙ナプキンを折りたたんでポケットに挿し、「遠くから見たらわからんじゃろ」と、ニヤリと笑われました。いざという時も、冷静に対処して、笑って事なきを得る。会長のそういう姿勢や考え方から多くを学びました。

同時に、ベネッセを通して日本の教育の現状を知り、テクノロジーが圧倒的に不足していることも感じていました。私も子育てしているのでわかりますが、保育園や小学校から家庭に渡される書類は基本的に紙です。生徒の個人情報や学習状況の管理も、電子化はほとんど進んでいません。

民間の教育産業も、今でこそテクノロジーを活用するようになりましたが、10年ほど前の当時は、紙の書類で管理するのが一般的でした。

それだけ、膨大な労力と時間をかけていたのです。その頃から、日本の教育にはもっとテクノロジーが必要だと感じはじめていました。

また、私は小学生の頃からゲームが好きなので、学習の二大課題と言われている、「学習意欲の喚起と継続」にゲームを有効活用できるのではないか?ということも考えました。

そこで、福武会長がニュージーランドへ移住したことも重なり、本当にやりたいことをやるための方向性を見直すため、グループ会社のベルリッツへの出向と合わせてベネッセは4年で辞めることにしたのです。

自分が1年後、ベルリッツで同じ仕事を続けている姿を容易に想像できたのも、大きな理由でした。大企業で待遇もよく、仕事にも慣れてきたけれど、1年先も今の仕事を続けているのはつまらない。このままズルズルと同じ仕事を続けて40代になってしまったら、本当にやりたいことをするチャンスを逃すかもしれない。そう思ったからです。

一定の収入を得られて、勤め先の仕事に慣れてきて、人間関係もできてくると、そのまま続けるほうが楽になります。できる限りの安定を求めて、そのまま年を重ね、次の一歩を踏み出せなくなっている人もたくさん見てきました。

もちろん、価値観や考え方は人それぞれですから、本人が納得しているのであれば、他人がとやかく言う必要はありません。

けれども私は、30代までは、40代以降にやりたいことを実現するための準備期間だと考えていました。

ですから、安定や収入にしがみつく必要もなかったのです。むしろ、長い人生、仕事に困らなくなるためには、やりたいことを追求しながら自分という人間のレア力を高めていく必要がある。そう思って、また転職活動を始めました。



小宮山 利恵子

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】小宮山 利恵子(こみややま・りえこ)
スタディサプリ教育AI研究所所長。国立大学法人東京学芸大学大学院准教授(教育AI研究プログラム)。2018年、米国国務省IVLP修了。

【書籍紹介】『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA)

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