スキルUP

「自分探し」で海外バックパッカーになるのはもうやめよう/黒坂岳央

「自分探し」に躍起になって海外を放浪しても、誰もが人生の大発見をできるわけではありません。では、自分の才能を見つけるにはどうすればよいでしょうか。ビジネスジャーナリストの黒坂岳夫さんが、自身の挫折経験を交えながら解説します。

人は自分自身のことをよくわかっているようで、本当はわかっていないものです。知識や経験がゼロから生まれてきて、人生経験を経て、自分という対象への理解を深めていくものなのです。

「自分自身を知りたい、自分が求めているものは何かを知りたい!」そう思って、海外バックパッカーとなり、海の向こうへ旅立っていく人がいます。

結論を先に言えば、そのようなことをしても自分というものは見つかりません。

本当の自分は、見知らぬ国でお土産を買うように手に入るものではないのです。

「ストックとフロー」、体験には2つの種類がある

人生経験は時に、その後の人生を変えてしまうようなものもあります。

例えば「インドへ旅行して、ガンジス川で死体が流れてくるのを見て衝撃を受けた!」というような衝撃の大きさを物語るエピソードがあります。こうした体験を期待して、海外バックパッカーになる人がいます。

まず、体験には2種類あることを理解する必要があります。一つはフローとしての体験、そしてもう一つはストックとしての体験です。

フローとは「流れる」という意味があり、言葉通り空気のようにすり抜けて後に残らないような体験と私は定義します。

これに対して、「ストック」というのは「蓄積する」という意味があります。こちらはフローと異なりその後の人生を生きる上で価値観や知恵となるような「資産化」するような体験のことなのです。

強烈な体験もいつかは過去のものになる

興味深いことに、同じ体験をしても人によってフローとストックに分かれるのです。

「ガンジス川での衝撃的な体験」を例にあげれば、体験した後しばらくは脳裏にはっきり焼き付いて離れないような感覚を覚えるでしょう。

しかし、人によってはその後、会社に就職して5年後、10年後にはそんな体験をしたことを跡形もなく忘れてしまうでしょう。その場合、この人のガンジス川での体験はフローとなります。

しかし、ガンジス川での体験がきっかけでインドの貧富の問題に関心を持ち、その後国連に入ることを目指して勉学に励み、キャリアアップをしていくのであれば、その体験はまさに一生モノの資産=ストックになります。

このように一口に人生経験と言っても、フローとストックに分かれるのです。

海外バックパッカーをすると、平和な日本では体験しえないことを経験するでしょう。

しかし、誰もが海外バックパッカーができるわけではありませんし、そもそも海外で自分の才能を見つけられる保証はありません。

自分の適性は国内で見つかる

一つ、国内にいながらして自分の隠れた才能を見つける方法があります。それはあえて自分の身を極限状態に置くことです。

多くの人は楽に自分を見つけたいと考えます。しかし、楽な環境では本当の自分など見つけることはできません。

たとえば「50mを30秒で走りきりなさい」という課題が与えられたらどうでしょうか? ほとんどの人にとって、まったく負荷に感じないこのチャレンジは楽勝すぎて、才能を見つけることにはつながりません。本気や創意工夫をする必要がないからです。

ですが、「50mを6秒台で走りきれ」と言われるとどうでしょうか? この場合は先ほどと話が違ってきます。人によっては達成が非常に難しく感じるでしょう。走る練習をして、足の運びや腕の振り方を工夫しなければ、7秒台の壁を破ることは簡単ではありません。

その中で興味を持てず、諦めてしまう人や逆に闘志を燃やして壁を破る努力を楽しめる人に分かれるでしょう。

このように「極限状態」に身を置くことが、その分野への興味関心の有無、適正、才能を見つけるきっかけになるのです。

適正は本気でやってみないと分からない

私は会計学を10年以上かけて学習、体験をしました。学習費用もビジネススクール、アメリカの大学への留学など膨大な金額をかけて取り組んできました。外資系企業へ転職を繰り返してキャリアアップをして、猛烈に取り組んできました。

全身全霊を込め、10年来追い求めた英文会計という分野を掴んだときの感動はひとしおです。

しかし、追い求めて掴んだ夢は、残酷な現実をつきつけることになりました。

他の同僚より長い時間をかけ、より努力をし、より高い教育コストをかけてようやくトントンといったところなのです。投下している努力量に見合う結果が返ってきている感覚がありません。

同僚と同じ成果を上げるために、同僚が定時退社をする中、私は時には21時、22時と遅くまで残業をして、社外でビジネススクールで勉強をしてなんとかついていったという感じです。

10年かけて持てる資金と時間のすべてを注ぎ込んだ結果、気づいたことは「私にこの分野の才能はない」ということです。

絶望的な結果が出た時、私が次に取った行動は「これまでやったことをすべて捨てて、適正のある分野で頑張る」ということです。

幸い、いまは自分が夢中になって取り組めるビジネスを見つけることができてよかったなと思っています。でもそれができたのは、長年追い求めてきた分野が自分に適性がなかったということがわかったからなのです。

適正を見つけることは簡単ではありません。

でも、その見つけ方は決して海外へバックパッカーへ行くことではないのです。


黒坂 岳央

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】黒坂 岳央(くろさか・たけお)
1981年、大阪府生まれ。「水菓子 肥後庵」代表。ビジネスジャーナリスト。高校卒業後、5年間のニート&フリーター生活の後、関西外国語大学短期大学部に入学。在学中にシカゴの大学へ留学し、会計学を学ぶ。卒業後は、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て、高級果物ギフト専門店「水菓子 肥後庵」を設立。
■Blog:黒坂岳央の超公式ブログ
■Twitter:@takeokurosaka

【著書紹介】『1年でTOEIC985点&英検1級! 中学レベルの僕が「読むだけ勉強法」で英語をペラペラ話せるようになった!』(大和書房)

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