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営業職必見! みなし労働時間制で損をしないために/ブラック企業によろしく(13)

「労働法」を知らないことにつけこんで、企業が都合よく労働者を扱っている!?労働者を守りうる知識という「武器」を『ブラック企業によろしく 不当な扱いからあなたを守る49の知識』(笹山尚人著)からご紹介します(最終回)。

ケース13 みなし労働時間って何?

私は食品会社で外勤の営業をしています。主な仕事は担当しているレトルト食品を、スーパーに置いてもらえるように、スーパーのバイヤーと交渉する仕事です。どれだけ効率的にたくさんのスーパーと交渉できるか。そして一回一回の交渉でどれだけいい契約を結べるかがポイントになります。


一応所属の営業所に出向いてから外勤に出かけることがルールにはなっているのですが、この仕事では営業先にそのまま向かう直行、営業先から直接自宅に帰る直帰をすることも多いです。

その場合にタイムカードが切れなくて困っていました。

近頃会社が、

「外勤は労働時間の管理が大変なので、みなし労働時間制度を入れる」

と言い出しました。


これはいったいどういう制度ですか?

私たちが気を付けなければいけないことは何かあるのでしょうか?

みなし労働時間は、法律を守っているかがポイント

みなし労働時間制とは、今回のケースのように、労働時間の把握が困難な場合に、時間外労働算定のための計算を行わず、一定時間働いたものとみなす制度です。

この制度の対象となる業務は、1日の大半を社外で働くなど労働時間の算定が困難な業務や、業務の遂行方法を労働者本人の裁量に委ねる必要がある業務などです。

みなし労働時間制には、所定労働時間労働したものとみなす方法と、一定時間残業したものとみなす方法があります。またみなし労働時間制は、次の3つに大別することができます。


① 事業場外労働に関するみなし労働時間制

② 専門業務型裁量労働に関するみなし労働時間制

③ 企画業務型裁量労働に関するみなし労働時間制


このうち②・③は、通常裁量労働制と呼ばれるもので、今回は①に該当します。

①を適用するために「労働時間を算定し難いとき」という要件があります。具体的には、事業場外で業務の全部または一部が行われているかどうか。そして使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定し難いと判断されるかどうかがポイントになります。

労働時間の算定としては、次の3つのタイプがあります。


① 原則として、所定労働時間を労働したとみなすもの

② 業務遂行のために通常の所定労働時間を超える時間を労働したとみなすもの

③ ②の場合で、労使協定により決めた時間を労働したとみなすもの


この②・③の場合、超える時間については時間外賃金が必要です。また法定時間を超えると割増賃金が必要です。さらに③の場合では、労使協定で定めた時間が1日8時間を超える場合には、労働基準監督署への届け出が必要となります。

これは就業規則に書き込むことで導入は可能ですが、法の要件を守っているか検討が必要です。そうでなければ、長時間労働をしても所定労働時間だけ働いたとみなされ、残業代が払われるべきなのに正しく払われない、ということになりかねないからです。

法は、「労働時間を算定し難いとき」「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」という要件を設けています。

前者については、例えば、携帯で連絡を取り合い指示を仰ぐことが常態化しているとか、営業所に帰社して報告することが多いなどの場合、要件が認められないことになります。

現在のように、通信機器の発達によって、始業・終業に関する報告や確認を行うことが、社外にいる労働者であっても容易に行える状況においては、「労働時間を算定し難い」という状況が容易に生まれることはなくなった、と考えられています。その意味では、今回のケースも、この要件を満たすのかという点では、慎重な検討が必要であり、この要件を満たさないからみなし労働時間制を導入するのは無理である、と考えられる場合も想定できると思います。

後者については、外で働く時間として平均的な時間がどれくらいであるかの実態を反映した算定時間になっているかの確認が必要と思われます。

◇ ◇ ◇

外で働いた時間の実態をきちんと反映した賃金をもらえているか確認しよう



笹山 尚人

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】笹山 尚人(ささやま・なおと)
第二東京弁護士会会員。東京法律事務所所属。弁護士登録以来、青年労働者や非正規雇用労働者の権利問題、労働事件や労働運動を中心に扱って事件を担当している。著書に、『人が壊れてゆく職場』『それ、パワハラです』(光文社新書)、『労働法はぼくらの味方!』『パワハラに負けない!』(岩波ジュニア新書)などがある。

【書籍紹介】『ブラック企業によろしく 不当な扱いからあなたを守る49の知識』(KADOKAWA)

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