「安請け合い」をやり遂げる力に!約束のパワーを活用/「のび太」が教えてくれたこと(2)

「ドラえもん学」の提唱者が発見した、生きていくうえでのヒント。「とりあえず言うだけ言ってみよう」など、のび太の言葉から得られる学びの数々を、『「のび太」が教えてくれたこと』(横山泰行著)からご紹介します(第2回)。
人のためなら頑張れる
他人に喜んでもらうのは、とても嬉しいことです。
かといって、何でも安請け合いするのは、単なるお調子者かもしれません。
「いいよ、まかせておいて。きっと探してくるから」
目の前の人を喜ばせたくて、つい、無理な約束をしてしまうことも。すると、あとから取り返しのつかないことになってしまいます。
ただ、優しさゆえの「安請け合い」は、私は悪いことだと思いません。
人は、自分との約束はすぐにチャラにできるけれど、誰かとの約束はなんとか守ろうとします。
だから、まず約束をしてしまうというのも、がんばれる方法の一つなのです。
どんなに疲れていても、自分ではない誰かのためにがんばれて、その誰かが喜んでくれるという状況はとても幸せなものです。
お母さんは、子どもが喜んでくれると思えば、早起きしてお弁当も作れます。
「おいしかった」と空の弁当箱を持ち帰ってくれたら、それだけで幸せな気分になることでしょう。
どんな小さなことでもいいですから、自分以外の誰かのためにやれることを増やしていきませんか?
そして、まずは「やる」と約束をしてしまうのも手。後には引けない状態にすれば、本気になってなんでもやってやろうという気持ちがわき出るかもしれませんよ。
では、のび太の場合はどうでしょうか?
のび太も他人に喜んでもらうのが好きなようで、クリスマスに軽い気持ちで、町内の子どもたちと約束をしてしまいました。でも、その約束が無理なものだと、すぐにわかってしまいます。
このときのび太が約束した相手は、純粋無垢な子どもたち。のび太のことを、本気で信じていたようです。なので、いくら意気地なしののび太といえども、一度口に出したことはやり遂げなければならないと腹をくくったのです。
そして、ダジャレまで飛ばしているので、余裕まで見せているんでしょうか!?
◇ ◇ ◇
ドラえもんのひみつ道具に「サンタメール」があります。これを使ってサンタクロースに手紙を書くと、クリスマスの夜にプレゼントが届くというものです。
ある日、のび太はドラえもんに無断で「サンタメール」を使って、町内の子どもたちにクリスマスプレゼントを贈る約束をしました。
しかし、この道具はサンタ切手というものが貼られていないと、プレゼントを届けてくれません。「サンタメール」は、戻ってきてしまいました。
「サンタメール」はたくさん持っていたドラえもんですが、サンタ切手は高価なため一枚しか持っていなかったのです。
だから、ドラえもんでもどうすることもできず、のび太は自分で責任をとるしかなくなりました。
覚悟を決めたのび太は、立ち上がると、ゴミ置き場へ向かいます。そして、そこから大量のこわれたおもちゃを拾い集めて、夜遅く家に持ち帰りました。
それらを直して、なんとかプレゼントをつくろうとしているのび太の熱意に感動したドラえもんは、ひみつ道具をいろいろ出して協力します。
包んだものを新しくする「タイム風呂敷」や、映したものを二つに増やす「フエルミラー」のおかげで、どんどん新しいおもちゃをつくり出すことができました。
準備が整った二人は、トナカイロボットに乗って、各家庭に。フレゼントを配り始めます。
しかし、半分ほど配ったところで、冷えと疲れがピークに……。
「来年にしない?」
とドラえもんに声を掛けると、のび太は怒鳴られてしまいます。
でも、プレゼントを配って子どもたちを喜ばせているのび太には、ダジャレを飛ばす余裕がありました。
「なんでサンタクロースというかわかったよ。さんざん苦労するからだ」
『てんとう虫コミックスドラえもん第21巻』小学館 第15話目「サンタメール」

横山 泰行
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【著者紹介】横山 泰行(よこやま・やすゆき)
富山大学人間発達科学部名誉教授。ドラえもんアナリスト。登場人物が夢や悩みにどのように対応し、解決したかを考え、人生を豊かにする方法を模索する「ドラえもん学」を研究。主な著書に『「のび太」という生きかた』『「のび太」が教えてくれたこと』『「スネ夫」という生きかた』(アスコム)があり、これらで合計30万部を突破している。
【書籍紹介】『「のび太」が教えてくれたこと』(アスコム)
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