5回は繰り返すべき! トヨタでも実践している「なぜなぜ分析」とは/ポータブルスキル大全(10)

より豊かな人生のために、キャリアを選択できる時代。誰もが転職しうる「全員転職時代」を生き抜くためのスキルを、『人材育成コンサルタントが本気で考えた 全員転職時代のポータブルスキル大全』(HRインスティテュート著)よりご紹介します(最終回)。
本質的な原因に迫るなぜなぜ分析
何度も同じ問題が生じてしまい、なかなか解決ができない。こうした事態に遭遇したとき、心が折れそうになる。そこでついやってしまうのが、問題を見ないことにしたり、思いついた解決策をただがむしゃらに実行する、というものだ。これをやると、問題は確実に再発する。
ネガティブな問題だけではない。たとえば、あなたが営業部に所属していて、今期の売上が好調で目標を達成できたとしよう。うれしさにうかれて、成功に至ったプロセスを振り返らなければ、次年度に再度目標を達成することは難しいだろう。なぜ売上が好調だったのか、なぜ目標が達成できたのか、この「なぜ?」の問いがあってはじめてその結果に至った背景や原因、秘訣を知ることができるからだ。
この「なぜ?」を問う考え方を「なぜなぜ分析」と呼ぶ。なぜなぜ分析はトヨタをはじめとする製造業の生産現場で一般的に用いられる概念だ。人の命を預かる自動車をつくる仕事では、絶対に間違いは許されない。仮に不良が出たときはその原因を確実に突き止め、再発を防ぐことが100%必要になる。こうした緊張感のもと生まれた考え方が、本質的な問題に迫るための「なぜなぜ分析」だ。
問題に対して「なぜ?」を繰り返すという考え方は極めてシンプルだが、実際にはかなり難しい。人間はどうしても自分の経験や解釈で原因を分析する傾向があるからだ。したがってこの「なぜなぜ分析」では「ビデオテープの巻き戻し」と言われるくらい忠実に、発生した事実を振り返りながら原因を探り、結果から逆算してさかのぼっていく思考が求められる。
すぐに意識できる留意点は次の3つだ。
①1回や2回の「なぜ?」で満足しない。5回ぐらいは繰り返す意識を持つ。
②「なぜ?」で原因を探ったら、必ずその原因から結果が導けるのか、反対の検証を行なう。そこで辻褄があわなかったらやり直し。
③原因をできるだけ他責にしない。たとえば「売上が伸び悩むのは市場が停滞しているからだ」と原因を見出したところで、「ではどうすれば?」と行き詰まってしまう。この場合は「売上が伸び悩むのは市場の停滞に対応できていないからだ」と、自責で原因を考えるようにする。
まずはこの3つの留意点を意識することから始めよう。大切なのは、問題や結果と出会ったときに本質を探ろうとするスタンスを持つことだ。
◇ ◇ ◇
「なぜ?」を繰り返すことで本質に迫ることができる。本質的に考えられる人はどの職場でもきっと頼られる存在になるに違いない。

HRインスティテュート
この連載をもっと読む
【著者紹介】HRインスティテュート
1993年設立。経営支援・人材育成を専門とする実践重視のコンサルティング会社。年間300社超の会社に対し、経営課題をクライアントと共に解決する「ワークアウト」、即効性重視の実践型研修「ノウハウ・ドゥハウプログラム」を軸に展開している。
【書籍紹介】『人材育成コンサルタントが本気で考えた 全員転職時代のポータブルスキル大全』(KADOKAWA)