「やりたいことをやる!」―MIT卒業生が語る、時代を生き抜くヒント

マサチューセッツ工科大学(MIT)と言えば、ノーベル賞受賞者を数多く輩出している全米屈指の名門校。同校を卒業して各界で活躍する日本人が語った、これからの時代を生き抜くためのヒントとは……?
8月25日、MIT卒業生からなる日本MIT会と、TOEIC® Programを運営するIIBC(一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会)の共催で「地球人財創出会議(※) サマー・セッション」が行われた。アメリカの名門・マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)の卒業生が登壇し、「未来のチェンジメーカーのための、イノベーター・リアルトーク」というテーマで、自身が現在取り組んでいるベンチャー・ビジネスや、MITで学んだことについて語った。
これからの時代を生き抜くため、若いうちに何をしておくべきか――。各界でイノベーターとして活躍するMIT卒業生たちの言葉を紹介する。
勉強のための勉強はしなくていい

バイオベンチャーのMusca Inc.で取締役COOを務める安藤正英氏は、「目的を達成するためのツールとして“勉強”をすることに尽きる」と話す。
「勉強のため勉強は、全く意味がないと思っている。極論を言えば、勉強はしなくていい」(安藤氏)
「何のために、何をすればいいのか?」を整理することが、実社会でとても重要であると指摘したうえで、「それができる人が一番力を発揮する」と語った。
終身雇用制度が崩れつつある現在、将来の不安から資格取得や英会話の勉強を始めた人は少なくない。そういった自己投資は良いことではあるが、「その勉強は何に役立てる予定なの?」と“目的”を聞いても、明確な回答ができる人はあまり多くないだろう。
現状の不安感を払拭するために“とりあえず勉強する”のではなく、まずは“目的”を定めてから勉強するようにすれば、定着度やモチベーションを高めることができるそうだ。
没頭できるものを見つけよう

「まずは『自分が没頭できる』という感覚が重要」と指摘するのは、宇宙ベンチャー・Astroscale Japan Inc.のミッション・システムズエンジニアである小林裕亮氏。
実は、小さいころから「これ!」という明確な夢があったわけではないという小林氏。「それが結構コンプレックスだった」と口にするも、「その時々の『これは面白い!』『これをやっていると時間を忘れる』といった感覚は、大事にしてほしい」とアドバイス。
「自分がやっていることを何かしらの社会貢献につなげたい」という思いを持つのも良いことだが、最終的にそこにつながればいいと考え、まずは自分が没頭できるものを見つけることがポイントだろう。
“できない理由”を“できる理由”に変換する

HRテックベンチャーのVISITS Technologiesでデータサイエンティストとして活躍する高橋聖氏は「人間は“できる理由”より“できない理由”を考えることが非常に得意なので、意識して“できない理由”を“できる理由”に変えてほしい」と話す。
確かに、人間は“できない理由”を探す天才だ。ダイエットを決意しても「雨が降りそうだから今日はジョギングをやめよう」「その代わり今日は階段をよく使ったし、無理しないでおこう」など、適当な理由付けをして、できないことを正当化しようとしてしまう。何かに挑戦しようとする時に必ず現れる、どうにかして「できない理由」を突き付けてくるもう一人の自分を、合理的かつ積極的に説得する術を身に着けておく必要がある。
さらに、高橋氏は「何でも良いからチャレンジしてほしい」と、実際に体験することの大切さを語る。
実際に体験しなければ、「自分は何に夢中になれるのか?」「どういうことが自分は好きなのか?」は見つからない。家の中でグダグダ考える暇があるなら、少しでも自分が興味を持ったものに積極的に挑戦することで、これからの時代をリードするビジネスパーソンになる可能性を高めることができるだろう。
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三人が指摘した「やりたいこと・目的を見つけること」の重要性。“やらされることをやる”のではなく、“やりたいことをやる”ということが、これからの時代で輝くために重要だと言えそうだ。
※「地球人材創出会議」とは…インタラクティブセッションを通じて、グローバル人材の育成に関する諸問題・課題について、考え、学び合う場。各分野の第一人者をゲストスピーカーに迎え、ディスカッション、セミナー等を実施する。一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会が主催。
文=宮西 瀬名
【プロフィール】
安藤 正英(あんどう・まさひで)氏
Musca Inc. 取締役COO。
1996年、三井物産株式会社入社。2015年、アナダルコペトロリアム社マネージングダイレクター(モザンビークプロジェクトファイナンス)。17年、文部科学省官民協働海外留学創出プロジェクトに参画。18年に株式会社ムスカに参画し、19年1月に取締役COOに就任。一橋大学社会学士、MIT経営大学院経営学修士(MBA)。
小林 裕亮(こばやし・ゆうすけ)氏
Astroscale Japan Inc. ミッション・システムズエンジニア。
MIT航空宇宙工学科において修士号取得後、大手電気機器メーカーの宇宙事業部門を経て、現在はスペースデブリ除去を事業とするスタートアップで、ミッション・システムズエンジニアとして働く。2020年打ち上げ予定の技術実証プロジェクトをリーダーの1人として推進。
高橋 聖(たかはし・さとし)氏
VISITS Technologies データサイエンティスト。
MIT機械工学科において博士号取得後、コンサルティングファーム、大手IT系企業を経て、現在はスタートアップにてデータサイエンス業務に従事。メインプロダクトのアルゴリズム設計や人材データを活用した新規サービス設計、その他各種データ分析を手がける。