アウトプット

アウトプットとは? スキルアップにつながる実践のコツを解説

アウトプットとは? スキルアップにつながる実践のコツを解説

 アウトプットとは、キャリアを重ねていく中でも大事な要素のひとつです。アウトプットを行うことで頭の中が整理され、知識が定着するという効果もあり、より高いレベルで仕事ができるようになります。ビジネスで欠かせないアウトプットの意味や目的、仕事の質を高める効果的な方法などを、人材育成コンサルタントの内田和俊さんにお伺いしました。

{ 目次 }

アウトプットとは?
アウトプットとインプットの違い
アウトプットの意味や目的
アウトプットを行うメリットや効果(仕事の成果を高めるコツ)
アウトプットが苦手な人の特徴について
アウトプットのコツ について
アウトプットの実践方法やトレーニング方法について
実践方法1「誰かに話す」
実践方法2「文章にする」
実践方法3「アイデアを蓄積する 」
実践方法4「アドバイスをもらう」
アウトプットトレーニングの注意点

監修者・内田和俊さんプロフィール

人材育成コンサルタント・内田和俊
人材育成コンサルタント・内田和俊KADOKAWA SEMINAR(C)

1968年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。人材育成コンサルタント。1994年〜2002年、大学受験専門の英語塾を経営。教科指導のみならず、効果的な勉強方法やモチベーションアップの方法を指導。その中で、心理学やコーチングを学び、カウンセリング事業を始める。その後、そのメソッドを社会人向けに展開し、人材育成コンサルタントとして、主に大手企業を対象とした社員研修やコンサルティングを実施。1年間で約1万人に集合研修、500人に個人セッションを実施。 著書も多数。
≫内田さんの過去講演など詳細はコチラ

アウトプットとは?

 「アウトプットの直訳は『出力』。実際には、学んで得た知識を書いたり、話したり、実践したりというのがアウトプットになります。『わかっている状態を、できる状態にする』と、イメージしてもらうとわかりやすいかもしれません」(内田さん・以下同)

アウトプットとインプットの違い

 「アウトプットに対して、インプットの直訳は『入力』。インプットは『知識量を増やす学び』だと私は考えています。しかし、インプットの段階だと『わかっているだけ』の状態なんですよね。そこで満足してしまう人も多いのですが、知識を得ても実践しないと意味がない。ここに、アウトプットとインプットの大きな違いがあるのではないでしょうか」

アウトプットの意味や目的

 「私が専門としているコーチング(自発的行動を促進するコミュニケーションスキル)でも、アウトプットを扱うことがあります。コーチングでは、人の行動レベルは3段階存在するといわれています。最初の段階『基本行動レベル』は、知っている状態。次が『応用行動レベル』で、これができる状態です。最後が『習熟行動レベル』で、人に教えられるレベルにまで達している状態です」

【人の行動レベル】
・基本行動レベル(知っている状態)
・応用行動レベル(できる状態)
・習熟行動レベル(教えられるレベルにまで達した状態)

 「もう少しわかりやすく説明しますと、例えば、自動車教習所に通って、運転の操作を講義で聞いて理解しているだけの段階だと『基本行動レベル』。『応用行動レベル』は、免許を取ったばかりの状態でしょうか。ブレーキを踏んでギアをドライブに入れて……と、まだ頭で考えながら行動しているのは応用行動レベルです。最終的に、まったく意識せずに運転できるようになっているのが『習熟行動レベル』となります。

 このように、アウトプットは基本行動レベルから、応用・習熟の行動レベルへ移行することを指します。最終目的は、習熟行動レベルまでもっていくこと。仕事に置き換えると、応用行動レベルだと現場の担当者で終わってしまいますが、管理職まで目指すとなると習熟行動レベルに達する必要がありますし、企業もそれを望んでいます」

アウトプットを行うメリットや効果(仕事の成果を高めるコツ)

 「アウトプットを行うことで、頭の中の整理ができますし、自分の理解度や至らない点を実感することもできます。アウトプットを簡単にできる方法として、手書きすることをおすすめしています。頭で考えているのと、実際にアウトプットという形で手書きするのとでは全然違ってきます。頭ではわかっているつもりでも、書いてみるとうまく書けなかったり、情報がまとまっていなかったりするんですよね。『この部分は自分のなかでは理解も実践もできているんだけど、この部分は思っていたよりもわかっていなかった』ということも、手書きすることではっきりします。仕事をする上でも、業務の優先順位が明確になり、作業手順がよりスマートに整理できるようになるはずです。

 また、知識の定着にもアウトプットは役立ちます。知っているだけのことは、定着率が低くなりがち。実践できているということは、完全に定着しているということなので、インプットしたものを定着させられることも、アウトプットを行うメリットだといえます」

【アウトプットのメリット】
・頭の中が整理できる
・自分の理解度が実感できる
・知識が定着する

アウトプットが苦手な人の特徴について

 「アウトプットが苦手な人は、インプットの量が圧倒的に足りていないことが多いです。当然、インプットがなければアウトプットはできません。逆に、本をたくさん読んで、知識は豊富なのですが『知っている』というところで終わってしまっている人もいます。インプットするだけで、満足してしまっているんですよね。資格マニアで資格はたくさん持っているけれど、実際の業務には何も活かせていないという人も、アウトプットが苦手な人といえます。

 また、『私は話すのが苦手だから』などと決めつけて、何も行動しない人や、『話してわかってくれないんだったら、別にいいです』という具合に、人に伝えることや行動することに磨きをかける努力を怠っている人も、アウトプット能力が低いままで終わってしまいます。

 引っ込み思案な性格で、アウトプットを実践したくてもはじめの一歩がどうしても踏み出せないという人もいます。また、以前にアウトプットを行ったときに上司や先輩に怒られた記憶があって、同じような失敗をするのが怖いという人もいます。ですが、上司や先輩はきっちりと準備をして失敗したのであれば、怒るどころか、むしろサポートしてくれるはずです。アウトプットが苦手だと思う人は、完成度を気にしすぎたり、失敗することを恐れたりせず、とにかく書いてみる、話してみる、伝えてみるという身近なところからアウトプットの実践をしてみてはいかがでしょうか」

【アウトプットが苦手な人の特徴】
・「知っている」で満足してしまう人
・自分自身や他人の事を決めつけがちな人
・人に伝えることを面倒くさがる人
・引っ込み思案な人

アウトプットのコツ について

 「アウトプットがきちんとできる人は、物事の優先順位を付けるのもうまいんです。また、そういう人は、効果的な時間の使い方ができています。例えばビジネスでよく用いられる、時間管理(タイムマネジメント)を行う上での4つの領域(下表参照)では、第1領域は『緊急かつ重要』、第2領域は『緊急ではないが重要』、第3領域は『緊急だが重要ではない』、第4領域は『緊急でも重要でもない』という分類をしています。アウトプットレベルの高い人は、第1領域に入る前の第2領域の段階から、アウトプットするための準備をしているんですよね。


 また、計画的に物事を進められる人は、失敗に対する解釈もすごく上手です。中長期的に考えれば、失敗は『学びの機会』や『改善の場』だから、失敗を過剰に恐れることもありませんし、失敗に伴うネガティブな感情も尾を引きません。失敗からも、もちろん成功からも学びを得ることで、継続的な成果につながっていきます。アウトプットを上手に行うヒントは、こういう考え方にもあると思います」

【アウトプットのコツ】
・計画的に時間を使って準備を怠らない
・失敗は「学びの機会」や「改善の場」と捉える

アウトプットの実践方法やトレーニング方法について

 自分の中に蓄積された知識や学びを上手にアウトプットするためには、どんな方法が有効なのか。ここでは、日々の生活や会社の業務のなかで実践できることや、トレーニング方法について内田さんに伺いました。

実践方法1「誰かに話す」

 「朝礼のときに社員が順番にスピーチをするという会社もありますが、これもアウトプットの訓練になります。上司へのホウレンソウ(報告・連絡・相談)も、アウトプットのよい実践機会です。

 大切なのは、事前に何を伝えるかを明確にすることです。おすすめは、要件などの項目数を冒頭で示すこと。例えば、先輩や上司に質問する際、『今日は3点お訊きしたいことがあります』という感じで話を切り出します。話したいことの項目数を明確にする習慣を身に付けるだけでも、アウトプットがうまくできるようになります」

実践方法2「文章にする」

 「会社の日報などもアウトプットの実践になりますので、提出するときはきちんと意識して書くことが重要です。一日の行動を時系列で整理しながら書くことは、アウトプットのトレーニングになります。

 文章を書くことに苦手意識のある人は、『箇条書き』にすることから始めてみてはいかがでしょうか。あまり複雑に考えず、とにかくシンプルな文章を心がけてみましょう。

 日々の生活のなかで書くトレーニングをするなら、文字数を決めることが大事。私が最適だと考えるのは100~200文字です。決められた文字数で箇条書きの日記をつけるだけでも、効果はあると思います。SNSで発信するのもとてもいい訓練ですよね。とくにTwitterは140文字と文字数が決まっているので、日々の出来事や何かテーマを決めて文章にしていけば、いいアウトプットの練習になると思います」

実践方法3「アイデアを蓄積する 」

 「知識はあるのになかなか行動に移せないのは、アイデアやひらめきが出てこないからだという人がいます。そんな人に私は、メモ帳を持ち歩くようにすすめています。アイデアは、煮詰まっているときには出てこないもの。移動中やお風呂に入っているときなど、ふっと力が抜けているときにひらめくことがあります。いつもメモ帳を持って、アウトプットのヒントになるアイデアやひらめきを書き留めておくことも、アウトプットをするための大事な準備だと思います。メモするときも、簡潔な文章で書くことを心がけてください。また、ベッド脇やトイレにも、メモを置いておくとよいでしょう」

実践方法4「アドバイスをもらう」

 「上司や先輩からアドバイスをもらうことも、アウトプットの質を高める実践方法になります。リモートワークで会う機会がないのであれば、チャットでもメールでもいいと思います。たとえ完成度が低かったとしても、何らかの形で状況を伝えてもらわないと、上司や先輩もフィードバックのしようがありません。とにかくアウトプットという『形』を提供することが大切です。

 会社は、先輩や上司のサポートを受けることができる絶好の場所なので、有効活用すべきだと思います。小さな行動からでいいので、できるところからまず始めてみてください。業務の報告は、終わったこと(結果)だけを伝えるのではなく、途中経過や、業務で今感じていることなど、プロセス、思いや感情などの周辺情報まで含めた報告をしてみてください。そのほうが上司は今の状況がハッキリと把握でき、サポートもしやすくなりますし、何を感じているかを伝えることで評価も変わってくる可能性があります。また、フィードバックを受けることでアウトプットの改善にもつながりますし、どういうインプットを増やしていけばよいのか、自分に足りない知識やスキルはなんだったのかといった貴重な気づきも得られます」

【アウトプットの実践・トレーニング方法】
・誰かに話す
・文章にする
・アイデアを蓄積する
・アドバイスをもらう

アウトプットトレーニングの注意点

 「とても残酷な現実ですが、会社も、上司や先輩も、お客様も、結局のところアウトプットでしか、判断や評価をすることはできないのです。インプットという頭の中は、他人には見えません。あくまでも本人の実感値でしかないのです。あなたが頭の中で考えていることは、何らかの形で表現をしなければ、誰にもわかってもらえません。ですから、アウトプットが苦手だからと開き直ったり、避けたりせず、言葉や文字という形で表現していくことが、ものすごく大事なのです。スキルアップして、より高いレベルの仕事をするためにも、アウトプットトレーニングを続けてください。

 会社では、どれだけアウトプットしているかということも評価の基準になります。もちろん形だけのものを提出して内容が伴っていないのはダメですが、第1印象として、何件提出したかという部分で評価が左右されることもあります。アウトプットは、一番『見える評価』の対象になりやすいので、件数を増やすことは大事です。アウトプットのトレーニングをするときには、その数も意識してください。

 とにかく、形にして外に出すというのが重要です。完璧でないものをアウトプットしてはいけないという考え方はやめましょう。完璧を求めすぎると、はじめの一歩が踏み出せなくなるので、トレーニング初期の段階では、完成度にこだわるよりも、まず実践が大切です。あまり完成度を気にせず、まずは、形にして出すことを第一に心がけた方がよいと思います。

 さらに、途中経過も必ずアウトプットするようにしてください。日々の経過報告は絶対にした方がいいし、評価にもつながります。仕事の経験が浅い人は完璧な案は出せないので、途中で何度か提出して、その都度修正のフィードバックを仰ぐのもよいと思います」

【アウトプットトレーニングの注意点】
・アウトプットしか評価や判断の基準にならないということを意識する
・アウトプットの件数を増やす
・完成度は、あまり気にしない
・途中経過もアウトプットする

 インプットした知識を、書いたり、話したり、実践したりするなど、アウトプットすることでスキルアップにもつながっていきます。アウトプットを行うことで頭の中が整理され、知識が定着するという効果があるだけでなく、往々にして自身の評価の指標にもなります。スキルアップにつながるアウトプットができるように、日々の生活や業務のなかで意識するようにしてみてください。

(取材/執筆 稲嶺恭子 )

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