チームビルディング

【チームビルディングとは】目的やメリット、具体的な実践方法をわかりやすく解説

【チームビルディングとは】目的やメリット、具体的な実践方法をわかりやすく解説

 チームビルディングとは、各自のスキルや能力を最大限に発揮し、より高いレベルで目標を達成できるチームを作り上げるための取り組みのことです。オンライン会議やリモートワークの増加といった労働環境の変化もあり、近年ますます注目されています。そこで今回、チームビルディングをテーマにした研修を数多く手がけている、人材育成コンサルタントの内田和俊さんに、チームビルディングの目的や行うメリット、実践方法などをわかりやすく解説してもらいました。

{ 目次 }

チームビルディングとは
チームビルディングを行うメリット
コミュニケーションの増加
各自のモチベーションが上昇
新しいアイデアの醸成
チームビルディングの実践方法
目標を達成するための5つのプロセス(タックマンモデル)
チームビルディングに効果的な手法
チームビルディングを行う際のポイント&注意点
チームの目標を明確に設定する
各メンバーの役割を明確化する
多様な価値観を容認する
強制的な目標設定はNG

監修者・内田和俊さんプロフィール

人材育成コンサルタント・内田和俊
人材育成コンサルタント・内田和俊KADOKAWA SEMINAR(C)

1968年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。人材育成コンサルタント。1994年〜2002年、大学受験専門の英語塾を経営。教科指導のみならず、効果的な勉強方法やモチベーションアップの方法を指導。その中で、心理学やコーチングを学び、カウンセリング事業を始める。その後、そのメソッドを社会人向けに展開し、人材育成コンサルタントとして、主に大手企業を対象とした社員研修やコンサルティングを実施。1年間で約1万人に集合研修、500人に個人セッションを実施。 著書も多数。
≫内田さんの過去講演など詳細はコチラ

チームビルディングとは

 チームビルディングには、さまざまなメリットがあると言われています。しかし、何の準備もせずに始めてしまうと、メリットを得られないばかりか逆効果にもなりかねません。まずは、チームビルディングとはどのような目的で行うのか、なぜ今の組織で求められているのか、背景を理解しておくことが肝心です。

 「組織とは、性格や能力、意識がまったく異なる『個』の集まりです。特に近年は、働く目的ひとつとっても、もちろん『やりがい』を求めている人もいますが、生活の手段と割り切っている人もいます。キャリアアップして転職することや将来の起業を目指している人もいるなど、働く目的も多様化しています。こうした多種多様なメンバーを1つにまとめ、『より早く、より確実に、より高いレベルで組織の目標を達成できるようにすること』がチームビルディングの目的だと考えています。

 昨今、チームビルディングがなぜ重視されているのかといえば、仕事の成果を短期間で出すことを求められるようになったからです。昔に比べ、時代やニーズの変化するスピードが上がり、仕事においても“効率化”の重要性が格段に増したことが大きな理由だと考えています。また、数十年前の日本は年功序列が当たり前でしたから、基本的に上司は年上でした。しかし今では、上司が年下になるケースも増えています。こうした労働環境の変化も、チームビルディングが重視される1つの要因でしょう」(内田さん・以下同)

チームビルディングを行うメリット

 チームビルディングは、組織はもちろん、マネジメントする側・される側にもさまざまなメリットをもたらします。ここではチームビルディングの具体的な事例としてイメージしやすい、野球のチームを例に説明してもらいました。

 「例えば、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場するメンバーは、国内外のさまざまなチームから集められた選手たちです。監督は、性格や能力の異なる選手たちをまとめ、世界一という目標を達成できるチームを短期間で作らなければなりませんが、監督として、これほどやりがいのある仕事はないでしょう。

 一方で選手たちは、世界一になることで、名誉だけでなく評価や価値の上昇など、さまざまなメリットを得ることができます。また、たとえ目標が達成できなかったとしても、そのメンバーに加わることが自分にとって必ずプラスになると、メンバーに感じてもらえることが大事です。これによって、一体感や帰属意識が醸成されていきます。企業の場合、それは離職率やメンタル不調の低下にもつながるでしょう」

 一体感や帰属意識が醸成されることによって、組織にもメンバーにも大きなメリットが生まれることがわかりました。そのほかの主なメリットについても見ていきましょう。

コミュニケーションの増加

 「1つ目は、コミュニケーションの増加です。チームビルディングを行う過程で、リーダーはメンバーへの声がけを行ったり、チーム内の対立を緩和したりと、各メンバーと積極的にコミュニケーションをとる必要があります。そのため、コミュニケーションの量は自然と増えていきます。また、チームビルディングでは『短期間で目的や役割をチーム内に浸透させること』がとても重要なので、コミュニケーションの質も向上するでしょう」

各自のモチベーションが上昇

 「リーダーから個々のメンバーに対しての要求が明確に伝えられると、メンバーのモチベーションがアップします。例えば、『あなたには1週間でこれをやってほしい』といったわかりやすい目標を伝えたとします。そうすると、メンバーはぼんやりと業務を進めることはなくなりますし、会社に行くだけで十分といった意識からも脱却できるでしょう。これが、結果的にモチベーションアップをもたらします」

新しいアイデアの醸成

 「『三人寄れば文殊の知恵』と言われるように、自分と異なる意見の人がいればアイデアの醸成につながります。1人では成しえなかったことを実現できたり、個の発想では思いつかなかったアイデアが生まれたりするのです。こうした環境ができてくると、メンバーのパフォーマンスも高まり、イノベーションを起こすチームへと発展していきます」

チームビルディングの実践方法

 チームビルディングを実践する際の基本モデルとして活用されているのが「タックマンモデル」というフローです。まずは、タックマンモデルをもとに実践方法を見ていき、続いてチームビルディングに効果的な手法についても紹介します。

目標を達成するための5つのプロセス(タックマンモデル)

 「タックマンモデルは、心理学者のブルース・W・タックマンが提唱したもので、チームの成長段階が形成期・混乱期・統一期・機能期に分類されています。後にプロジェクトマネジメントを想定した散会期が追加され、現在は5段階で活用されるのが一般的です。

 それぞれの段階におけるチームビルディングの取り組み方を、プロジェクトマネジメントを例に見ていきましょう」

1 形成期
 「新しいチームができ、メンバーが集められた段階。この時期は、メンバー同士がお互いのことをよく知らない状態なので、遠慮してまだ本音では話せません。ここでは、チーム内の目標を明確に示すことが大切です。また、心理的にけん制し合っている状態のため、メンバー同士の相互理解を促すワークショップやアクティビティを実践するのも効果的でしょう」

2 混乱期
 「お互いのことがある程度わかってくると、個性がぶつかりあうようになります。それがこの混乱期です。タックマンモデルでは“対立が起きる”と示されるほど、意見のぶつかり合いが発生します。困難なプロジェクトであればあるほど、時にはメンバー同士が激しく衝突するケースも珍しくはありません。この時期を乗り越えるためには、リーダーの介入が極めて重要になってきます」

3 統一期
 「混乱期を経て、他のメンバーの意見を受け入れられる土壌ができあがります。全員が、チームの目標や個々の役割について正しく理解し、チームに秩序が生まれはじめます。メンバー同士の関係性が安定し始めますが、まだ完全なチームとしては機能していません。この段階までは、リーダーがメンバーに深く関わることが求められます」

4 機能期
 「完全なチームとして機能するように進化させるのが機能期です。統一期からこの時期にかけて、リーダーはメンバーに権限委譲していくことが大切です。この段階を経て、メンバーは指示を出されなくても自発的に行動できるまでに成長します。こうなると、リーダーの役割はメンバーに対してフィードバックをするなど、サポートをする程度で十分になります」

5 散会期
 「チームの目標が達成され、活動を終える段階。プロジェクトそのものが終了したり、リーダーの交代が行われたりすることもあるでしょう。

 5つのプロセスで最も重要なのは“混乱期”です。メンバー同士が異なる意見でぶつかり合い、感情的になっているときには誤解も生じるでしょうから、リーダーは双方を落ち着かせる必要があります。そこで役立つのが、コーチングの手法です。

 感情的になっている状態を理性的にするには、言語化させることが大切。メンバーに対して、『何に対して怒っているのか』『どうしてほしかったのか』などと問いかけを通じて言語化を促します。言語化していくことで、感情的だった人は少しずつ冷静になっていきます。

 仲良しグループをつくることが目的ではありませんので、チームビルディングにおいて、お互いを好きになることは絶対条件ではありません。目標達成が目指すべきゴールなので、好き嫌いよりも、メンバー同士の相互理解こそが重要です。個別対応と並行して、メンバーを一同に集めて、ディスカッションやブレインストーミングを行い、『より良い方法』などを練り直す機会をつくることも大切です」

チームビルディングに効果的な手法

「GROW モデル」
 「私が実施している研修では、『GROW モデル』を使いながらコーチングを行っています。GROW モデルは、部下の自発性を促すのが目的で、コーチングの基本モデルとして用いられるフローです」

GROWは各ステップの頭文字をとったもので、ステップは以下の通り。
G:Goal (目標設定)
R:Reality (現状把握)・Resource (資源の発見)
O:Obstacle (障害の明確化)・Option(選択肢の創造)
W:When (期限の設定とフォロー)


 「GROW モデルの基本的な流れを説明します。最初にG(目標設定)を行った後、R(現状把握)・R(資源の発見)、O(障害の明確化)・O(選択肢の創造)へ移りますが、これら中間の4つの要素(RROO)に関しては、順番は自由です。また、O(障害の明確化)は、R(現状把握)に含めてもかまいません。そして最後がW (期限の設定とフォロー)です。ここでは、『何をいつまでに』または『何をいつから』などスモールステップの目標を設定し、フォローを継続します。

 一般的なGROW モデルではW=Will(意志、決断)ですが、私はWhen(期限の設定とフォロー)としています。ゴール間近の追い込み期こそ、スモールステップで『何をいつまでに』という期限を設けることがとても重要だからです。例えば私が一冊の本を書き上げるとき、最も苦しい追い込み段階になると担当編集者が細かいスケジュールを作ってくれるのですが、そのおかげで『伴走してもらっている』という安心感が生まれます。

 一方で、『内田さんは何冊も本を書いているから、自分でスケジュール管理できますね』と言われると、突き放されたような感じさえしてしまい、孤独感とつらさが増してしまいます。

 これは組織内でも言えることで、年上の部下に対しては配慮や遠慮もあり、『ベテランだから、自主性を尊重し、任せっぱなしで大丈夫』とつい思ってしまいがちです。でも、年上だからこそ周囲に相談しにくいこともあるはず。スモールステップの目標を設定してフォローすることはとても大事です。

 スモールステップの目標を設定すると、フォローやちょっとした声がけをしやすくなるというメリットもあります。チームビルディングでは、リーダーがいかにメンバーのモチベーションを高め、それを維持していくかが重要です。このちょっとした声がけの効果は、意外とあなどれません。

 人は誰しも感情の起伏があります。その起伏を小さくできるようにリーダーが働きかけることも、チームビルディングでは必須です。リーダーになると大きなことをやらなければならないと思いがちですが、メンバーの一人ひとりに対する細かい気づかいが、それぞれのモチベーションアップと維持につながります。いかに当たり前のことを当たり前にやっていくか。それがリーダーの大事な役割だと思っています」

ノミナル・グループ テクニック (NGT)
 続いて紹介するのは、ノミナル・グループ テクニック(NGT)と呼ばれる手法です。

 「NGTは、参加意識を高める手法でもあるため、メンバーの中から傍観者が出てしまうのを防ぐ効果があります。また、メンバーの中には、発言に対して控えめな人がいて、自分の意見が誰かの意見と似ていると、遠慮して発言しない傾向があります。それと似た慎重なタイプのメンバーは、自分のアイデアを勝手に他のメンバーのアイデアと全く同じだと自己判断してしまい、発言をためらいます。NGTには、このような隠れた意見を吸い上げる効果もあり、ここから画期的なアイデア、大発見やイノベーションが生まれることも珍しくありません。

 NGTの具体的な手順ですが、まずメンバー全員にアイデアを書き出してもらい、それをカテゴリ別に分類します。最後に参加者全員による投票を行い、優先順位をつけていくという流れでブレストする手法です。メンバー全員が同じ目標に向かって議論を深めることができるので、チームの結束力が深まります」

リーダーズインテグレーション
 ファシリテーターが必要になりますが、リーダーのための研修ではなく、メンバーも含めたチーム全体の研修では、チームビルディングの手法をアクティビティで学べるものもあります。

 「リーダーズインテグレーションは、チームビルディングのワークショップの1つとして研修などでよく使われるものです。本音を引き出す効果もあるため、リーダーとメンバーの信頼感や親密度が高まります。

 具体的な方法としては、最初にリーダーが自己紹介をし、チームの目標・方針を発表します。その後リーダーは退室し、メンバーはリーダーについて知りたいこと、目標・方針についての質問を列挙していきます。今度はメンバーが退室し、ファシリテーターからリーダーへ質問の内容を伝えます。最後にメンバーも入場し、挙げられた質問やコメントにリーダーが答えるという流れです。この手法では、よくありがちな、メンバーの発言や質問中に、リーダーがそれを遮って発言し始めてしまうのを防ぐことができます。また、普段なかなか直接聞きづらいことも質問できますので、リーダーとメンバーとの心理的な距離を縮めるのに役立ちます。

 ただ、ファシリテーターには、客観的かつ公平な視点、豊富な経験そして高度なスキルが求められます。基本的には外部のコンサルタントに依頼することになるため、ちょっとハードルが高いかもしれません」

チームビルディングを行う際のポイント&注意点

 チームビルディングに取り組むにあたって、組織の特徴に関わらず共通したポイントや注意点があります。

チームの目標を明確に設定する

 「チームビルディングでは、どのような組織やプロジェクトであっても、“何のためにここに集められたのか”といった目的や目標を明確にすることが大事です。そして『GROW モデル』のWhenにもつながりますが、『何をいつまでにやるのか』または『何をいつから始めるのか』といった期限まで明確にしなければ、モチベーションを保てなくなりますし、当然チームの士気も下がってしまいます」

各メンバーの役割を明確化する

 「チームがいつまでに何を目指しているのかを確認できたら、今度は“チーム内における個々のメンバーの役割”を明確にしましょう。チーム目標の設定と同じように、各メンバーの役割の明確化も、スタート段階における重要なポイントになります」

多様な価値観を容認する

 「これは『タックマンモデル』の混乱期における重要なポイントです。混乱期には、多様な価値観が存在すること、その多様な価値観が必要であることを、メンバーにしっかり理解してもらうことが大切です。さまざまな価値観を認めることは、新しいアイデアの醸成やイノベーション、斬新な方法、思いがけない気づきを生み出すことにもつながります」

強制的な目標設定はNG

 「上司が無理やり押しつけた目標では、メンバーの自発的な行動を促すことはできません。強制的な目標設定を回避するには『目標設定のSMARTモデル』が有効です。SMARTは目標設定のステップの頭文字を取ったもので、ステップは以下の5つになります」

目標設定のSMARTモデル
S:Specific (具体的)
M : Measurable (測定可能)
A: Agreed (合意形成)
R: Relevant (関連性)
T: Time-Bound (期限つき)


 「SMARTモデルでは、まず1つ目に具体性を重要視しています。抽象的な目標では達成までの方法や手段が見つかりません。『具体的・明確・肯定的』、この3つを意識した目標設定を行いましょう。2つ目の“測定可能”とは、数値化するなど外部基準を明確にし、目標を達成したときに本人だけでなく第三者も確認ができるようにすること。これによって進捗状況の把握もしやすくなります。

 3つ目は合意形成です。リーダーやマネージャーは、どうしても部下を説得しがちですが、説得より“納得してもらうこと”を意識してください。説得するときはリーダーが一方的に話してしまいますが、納得してもらうには、相手の意見をよく聴きながら進める必要があります。気持ちよく仕事してもらうためにも、納得は極めて重要です。

 4つ目は関連性です。複数の目標に関連性を持たせると相乗効果が生まれ、目標はより早く、より確実に、より高いレベルで達成できるようになります。

 そして5段階目は“期限つき”。特に『いつでもできる』『そのうちに』という安心感から先延ばしされがちな課題には、期限を設定することが強く求められます。また、期限内にできるようになれば、それは能力アップ、成長や自信につながりますし、チーム内における信頼感、評価、存在価値の上昇にもつながるはずです」

 チームビルディングを行うことで、チームとしての一体感や統一感の醸成、メンバー間のコミュニケーションの増加やモチベーションの上昇など、さまざまなメリットをもたらします。それらの効果により、メンバーの総数以上のアウトプットを創り出すことが可能になるのです。5人集まったら単なる総和である5の仕事ではなく、10や30といった相乗効果を創り出す。それこそが、チームビルディングの一番の醍醐味といえるでしょう。

(取材/執筆 嶋崎千秋)

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