自閉症の僕が跳びはねる理由

自閉症の僕が「世界に影響を与える30歳未満の30人」になるまで

自閉症の僕が「世界に影響を与える30代未満の30人」になるまで

 重度の自閉症を抱える作家・東田直樹さんが13歳の時に執筆した『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール/角川文庫/角川つばさ文庫)は、これまで理解されにくかった自閉症者の内面を当事者の立場から平易な言葉で伝え、30カ国以上で翻訳されるほどの世界的ベストセラーになっている。KADOKAWAセミナーでは、東田さんと母である美紀さんを迎えトークイベントを開催。自閉症との向き合い方や現在の思いなどを語った。

 東田直樹さんは、重度の自閉症を抱える作家である。13歳の時に執筆した『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール/角川文庫/角川つばさ文庫)は、これまで理解されにくかった自閉症者の内面を当事者の立場から平易な言葉で伝え、30カ国以上で翻訳されるほどの世界的ベストセラーになっている。

 このたび、東田さんがグローバルビジネス誌「フォーブス・ジャパン」により、2021年度の「世界に影響を与える30歳未満の30人」に選出されたことを記念し、トークイベントを開催。母である東田美紀さんとともに、自閉症との向き合い方や現在の思いなどを語った。

「知能検査で人の心は分からない」当事者が語る、自閉症の苦悩

 現在の研究では、自閉症は生まれつきの中枢神経機能の障害と考えられているが、症状や課題は人によって異なるため、どんなことを思っているのか、どのように受け止めるべきか、戸惑った経験を持つ人もあるだろう。東田直樹さんは、「記憶と表出、行動のコントロールに生きづらさを感じている」と自らの症状を説明。一方で、「知能検査や発達検査だけで、その人の能力や心の中は分からないのではないか」と指摘する。

 「障害に対して配慮は必要だが、僕自身は特別な対応を望まない」という東田さんは、支援していることを本人に感じさせないのが理想の支援だという。自閉症者の苦労は自閉症であることではなく、ありのままの自分で生きられないことにあると語り、「どうか僕たちの味方になってください」と受講者の方々へ画面越しにメッセージを送った。

会話のできなかった我が子がベストセラー作家になるまで


 そんな東田さんを29年間そばで見守ってきた母の美紀さんは、自閉症と診断された我が子を自らの手で教育しようと決心し、さまざまな試行錯誤を重ねてきた。文字や写真に関心を示す息子のため、単語帳や写真を使った絵本を自作するものの、会話として形をなすには至らない。所構わず奇声を上げる我が子を見て「直樹が泣きわめいても、母親である私は何も分かってあげられない」と途方に暮れたこともあったという。

 手を添えての筆談では「僕のこと、知らないくせに知っているみたいに言うからイヤ」と東田さんは自らの思いを発した。これにより美紀さんは、直樹さんが苦しんでいるのは言葉の理解ではなく、自身の表出ではないかと考えるようになった。習得には時間がかかったが、やがて補助なしでもポインティングやパソコンのタイピングで考えていることを表せるようになった。

 その後、美紀さんの勧めで東田さんはさまざまな作文コンクールに自身の文章を毎月のように応募。「直樹に才能があるならいつか認められる日が来る」と信じ続けた甲斐あって、東田さんの作品はグリム童話賞で大賞を受賞、書籍化された。

「自閉症のことを話すのは簡単ではない」それでも伝えたい思い


 後半の質疑応答では、自閉症の子どもを持つ受講者や支援者から質問や相談が続々と寄せられた。ピックアップされたいくつかの質問に対して東田親子は、実際の二人の体験談を交えてアドバイスを続ける。

 表出を苦手とする東田さんは、パソコンのキーボード配列に合わせたローマ字の文字盤を使いながら質問に回答。質問を聞き返したり補足を求めたりすることはなく、すぐに自分のコメントを話し始める様子からも、受講者の質問をしっかり受け止めていることがうかがえた。

 「自閉症のことを自分の言葉で話すのは簡単なことではありません」。

 自身の正直な気持ちを赤裸々に語り、障害と向き合い、胸の内を真摯に伝える東田さんのコメントは、限られた時間にもかかわらず、多くの受講者の胸を打ったのではないだろうか。最後に、東田直樹さんから「自分の思いをうまく伝えられたかどうかわかりませんが、聞いてくださってありがとうございました」と感謝の言葉が述べられ、セミナーは盛況の中、幕を下ろした。

【講師プロフィール】

東田 直樹
(作家)
1992年千葉県生まれ。重度の自閉症でありながら、パソコンおよび文字盤ポインティングにより、コミュニケーションが可能。13歳の時に執筆した『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール/角川文庫/角川つばさ文庫)で理解されにくかった自閉症の内面を平易な言葉で伝え、注目を浴びる。 同作は翻訳され、2013年に「The Reason I Jump」が刊行。現在30カ国以上で翻訳、世界的ベストセラーに。著者に『自閉症の僕が跳びはねる理由2』『ありがとうは僕の耳にこだまする』『あるがままに自閉症です』『跳びはねる思考』『自閉症の僕の七転び八起き』『自閉症のうた』『絆創膏日記』『世界は思考で変えられる』他多数。2021年10月『Forbes JAPAN』誌が選ぶ、「世界を変える30歳未満の30人 30 UNDER 30 JAPAN 2021」に選出。

東田 美紀

1962 年生まれ。 1983 年、総合病院の正看護師として勤務。1988 年、結婚を機に退職。 会話の無い長男とのコミュニケーション方法を探索。試行錯誤の上、パソコンのキーボードと同じ配列でアルファベットを画用紙に書いた文字盤を考案。東田直樹の講演活動や執筆活動をサポートしている。

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