著者インタビュー

自閉症者の作家・東田直樹の少年時代「新生活の始まりは、前向きな気持ちだった」

自閉症者の作家・東田直樹の少年時代「新生活の始まりは、前向きな気持ちだった」

 13歳の時に執筆した『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)で、世界から注目を集めた作家・東田直樹さんに、メールインタビューを行いました。進級、進学など新しい生活環境に身を投じる人が多いこの季節。自閉症を抱えた東田さんは、どんな気持で新生活を迎えていたのか? 「僕は、うまくいく姿を思い浮かべるタイプ」と明かす東田さんの“ポジティブ思考のコツ”も伺いました。

前向きになれるコツ「うまく行かない」に振り回されない


―― 春の入学や進級など、環境が大きく変わるときの心境はいかがでした?

 僕は、クラスのみんなに迷惑をかけたらどうしようと心配していましたので、不安はもちろんありました。でも、嬉しい気持ちのほうが大きかったです。新しい環境に慣れるまでは時間がかかりましたが、まっさらな教科書やノートを手にしたときには、「よし、頑張るぞ」という前向きな気持ちになれました。それは僕が自閉症かどうかにかかわらず、多くの子どもが感じる気持ちだと思います。

―― 「初めて」と向き合う場合の心構えはありますか?

 初めての経験を前にしたとき、うまくいく姿を思い浮かべる人と、うまくいかない姿を思い浮かべる人がいるのではないでしょうか? 僕は、うまくいく姿を思い浮かべるタイプの人間です。うまくいく姿を思い浮かべると、うまくいかなかったとき余計つらいのではないかと思われるかもしれませんが、僕の頭の中では予想は「未来」のこと、起きた出来事は「現在」、終わってしまったことは「過去」に分類されるので、うまくいかなかったとしても、その原因が自分の予想にあるとは考えないのだと思います。

純粋に「僕と遊びたい」と思ってくれた時間


-- 学校生活で楽しかったことなど、印象深い出来事を伺いたいです

 僕は休み時間によく座り込んで運動場の地面にひとりで文字を書いていました。ときどき誰かがやってきてはのぞき込み、僕が書いている文字を読んでくれたり、隣に座って文字を書いてくれたりすることがありました。その子たちはすぐにいなくなるのですが、短い時間でも僕の遊びに興味を示してくれたのは嬉しかったです。それは、僕のことを先生に頼まれてお世話しているわけではなく、純粋にその子が僕と遊びたいと思ってくれた時間だったからです。

良いところも悪いところもひっくるめて「僕」

――「世界自閉症啓発デー」に行う講演会についても一言お願いします

 ここまで(この記事を)読んでくださって、どうもありがとうございました。「自閉症で良かったことは何ですか?」と時々聞かれることがあります。そのたびに、僕はいつも考え込みます。それはみなさんが「あなたのいいところを教えてください」と聞かれるのと同じだからでしょう。良いところも悪いところもひっくるめて「僕」という人間なのです。自閉症だからといって悪いことばかりではありません。今回のセミナーが、そんな希望が持てる時間になることを願っています。

 今後の東田さんは、4月2日の「世界自閉症啓発デー」にKADOKAWAセミナーが運営するオンライン特別イベント『自閉症を知ってください』に、母・美紀さんと一緒に登壇予定。同講演会では、直樹さんが内面の思いを外に発信できるようになるまで、さまざまな試行錯誤を重ねた美紀さんの「自閉症の息子が文章を書けるようになるまでに行った大切なこと」をテーマに、親子トークを展開します。

<講演会詳細>
【世界自閉症啓発デー】オンライン特別イベント
登壇者:作家・東田直樹(自閉症当事者)+母・東田美紀「自閉症を知ってください」
日時:4月2日(土)/14時開始/オンラインイベント

>>詳細はこちら
https://studywalker.jp/seminar/detail/459/

<東田直樹さんプロフィール>

重度の自閉症者であり、世界的ベストセラー『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール/角川文庫/角川つばさ文庫)の著者。パソコンおよび文字盤ポインティングにより、コミュニケーションが可能。『自閉症の僕が跳びはねる理由2』、『ありがとうは僕の耳にこだまする』、『あるがままに自閉症です』、『跳びはねる思考』、『自閉症の僕の七転び八起き』、『自閉症のうた』、『絆創膏日記』、『世界は思考で変えられる』など他多数を出版。2021年10月『Forbes JAPAN』誌が選ぶ、世界を変える30歳未満の30人 30 UNDER 30 JAPAN 2021に選出。

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