【忍者の精神】今を生きる大人たちへの教訓を「忠誠心」
「忍術を志す者は、毛頭も私欲のために忍ぶことなく、また無道の君主のために謀ることはしてはならない―」。今日では、奇術や卓越した身体能力で注目されることの多い忍者だが、根幹となる精神性がなければ見せ物と変わらなくなってしまう。忍術を「道」に高めるために必須な精神とはいったい何だったのか。『万川集海』ほか、貴重な忍術書を具体的に読み解き、今をいきる大人への教訓を届けます。
みなさんの中に、子供のころ『NARUTO』や『忍たま乱太郎』などのマンガやアニメをみて忍者に憧れたことがある人は多いのではないでしょうか。闇にまぎれて手裏剣を投げ、水の上をスイスイ歩き、煙の中にドロンと消える! そんな「術」はもちろん魅力的ですが、実は、忍者の根幹とは技術ではなく「精神」、つまり生き方の哲学にあることをご存じでしょうか。
自分を知ること、
命を守り生き抜くこと、
忠義を尽くすこと……。
それらを伝える忍者の書物をひもとけば、忍者の実態に深く迫れるだけでなくわたしたち今を生きる大人の教訓にもなる言葉がたくさん見つかるんです。
「私欲のために忍ばず、無道の君主のために謀らない」
まずは『万川集海』忍術問答をご紹介します。
この問答は、主君に仕えた忍者の忠誠心と、その忠誠心を貫くために何をすべきがこんなに短い言葉の中に記されています。
―――――――意訳――――――――――
「忍道」は信実の道理にはずれない
謀《はかりごと》であり、
君主を欺く術《すべ》はない。
ゆえに『万川集海』正心下
(実際は「正心第一」)にいうように、
この術を志す者は
毛頭も私欲のために忍んだりせず、
また無道の君主のために謀ることは
してはならないということを
知らなければいけないとしている。
――――――――――――――――――
この問答が伝えているのは、何よりもまず、誰のためにがんばるのか、誰と信頼関係を築きたいのか、付き合う相手をきちんと見極めること、そして決めたら私欲のためでなく忠義を尽くすこと。人との関係を築く指針としたい考え方が現れています。
『忍者の精神 』
忍術を「道」に高めるために必須な精神とはいったい何だったのか。『万川集海』ほか、貴重な忍術書を具体的に読み解き、誰も知らなかった忍者が忍者たる核心に迫る初めての書。
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<著者プロフィール>
山田 雄司
1967年静岡県生まれ。
1991年京都大学文学部史学科卒業。亀岡市史編さん室を経て、1998年に筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科史学専攻(日本文化研究学際カリキュラム)修了、「崇徳院怨霊の研究」で学術博士。その後三重大学人文学部で教鞭をとり、2011年より教授。専門は日本古代・中世信仰史。