ITパスポートの難易度は?合格に必要な知識や勉強方法をプロが解説
ITパスポートはエンジニアに限らず、すべての社会人や学生を対象とした国家試験です。情報技術系の試験というとハードルが高いイメージがありますが、ITパスポートは幅広い基礎知識が問われる内容なので、IT初心者でも挑戦しやすい試験として知られています。
{ 目次 }
- ITパスポート試験とは?
- 求められる知識
- 対象となる受験者は?
- 出題分野・試験方式について
- ITパスポートを取得するメリット
- ITの基礎が身に付く
- 他のIT系資格取得の足掛かりになる
- 就職・転職に活かせる
- ITパスポート試験の難易度
- 合格率は高い?
- 合格基準
- ITパスポート試験の勉強方法
- 必要な勉強時間は?
- ITパスポートの教材は主に4つ
- 学習のコツ
- ITパスポート受験に必要な基本情報
- 受験費用
- 試験の日程
- 試験会場
- 申込み方法
- さまざまな学習教材を利用して、ぜひ受験に挑戦!
そこで、これから受験を検討している方のために、IT系国家試験対策で定評のあるIT講師の丸山紀代さんに、ITパスポート試験の難易度や合格率、合格に必須の知識や勉強法などを教えていただきました。ぜひ、試験にトライしてみてください。
監修者・丸山紀代さんプロフィール
IT講師。システム開発会社での汎用機システムやECサイトの開発を経て、現在はJava、Pythonプログラミング研修を中心に登壇している。また、ITパスポート、基本情報技術者、応用情報技術者といった情報処理技術者試験対策講師としても活躍しており、オンライン学習サイト『Schoo』やWebセミナー『Deliveru』にて、基本情報技術者・応用情報技術者対策コースを担当。たとえ話や具体的な事例、イメージ画像を使った講義がわかりやすいと定評があり、受講者の合格率は9割を誇る。
関連記事:【合格率9割のトップ講師が一発合格をナビゲート!】 丸山紀代のITパスポート“とことん合格レッスン”
ITパスポート試験とは?
試験にトライするかどうかを検討するためにも、まずはITパスポートがどういった資格なのかを紹介します。求められる知識や出題分野など、はじめに試験の概要をお聞きしました。
求められる知識
「ITパスポートは経済産業省認定の情報処理技術者試験のうちの一つ。情報処理技術者試験には12区分(種類)のIT系国家試験が設けられ、基礎知識を問うレベルから高度な知識やスキルを必要とする上位レベルまで、その難易度はさまざま。なかでもITパスポートは、最も低い入門レベルの“IT初級試験”にあたります。
IT初心者でも挑戦できる国家試験ですが、学習法を工夫しないと通用しないのがITパスポートの留意点です。IT技術の基礎知識はもちろん、マーケティングや法務、財務や経営戦略のほか、プロジェクトマネジメントの知識まで幅広い分野の問題が出題されます。実務で直面する場面を想定した問題も出題されるので、用語の暗記学習だけでは太刀打ちできない、読解力や応用力が試される内容になっています」(丸山さん)
ちなみに、ITパスポート試験は平成21年度の4月より実施されていますが、それまでは初級システムアドミニストレータ試験(以下、初級シスアド)が行われていました。プログラミングや最新の技術に関する出題が追加されているので、初級シスアドの合格者がITパスポート試験を受験して知識をアップデートするのもよいと思います。
対象となる受験者は?
「ITパスポートとは、すべての社会人やこれから社会に出る学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識を証明できる国家試験です。ITの知識に加えてビジネス全般の基礎を学ぶことができるため、職種や業種を問わずITに触れる機会のあるすべての社会人が対象となっています。
業務のなかで一切ITを使用しない職種は少なく、特に一般企業では業務効率化を図る経理部などで受験を勧めるケースや、全社を挙げて取得を推奨する動きも出ています。また、就職に有利にはたらく可能性があるため、学生の取得も一定数見られます」
出題分野・試験方式について
「試験問題は全100問で、3つの分野で構成され、経営全般に関する『ストラテジ系』は35問程度、IT管理に関する『マネジメント系』は20問程度、IT技術に関する 『テクノロジ系』は45問程度が出題されます。
ITパスポートの試験は従来型の筆記試験とは異なり、コンピューターを使ったCBT方式が採用されています。試験時間は120分。受験者は試験会場のパソコンに表示された四肢択一の試験問題を解き、マウスで解答を選択。試験後に自動採点されるので、自分のスコアをその場で確認することもできます。合格発表は、受験月の翌月中旬に公式サイトで発表されます。
試験は年間を通して全国各地の会場で随時実施されているため、自分に都合のよいタイミングで試験日や会場を選択でき、受験しやすいのも特徴です」
ITパスポートを取得するメリット
国家試験であるITパスポートの取得は、さらに難易度の高い試験や資格にチャレンジするステップにもなります。個人のスキルアップのみならず、就職や転職の際にITの基礎知識をアピールできるのも大きな利点です。このような多岐にわたるメリットについて詳しく解説していただきます。
ITの基礎が身に付く
「試験に合格することで、IT技術を有効に使って業務を進めることができる“IT力”が身に付けられます。この試験は、ITに関する幅広い分野の基礎知識をバランスよく求められる、“広く、浅い”出題範囲が特徴です。セキュリティやネットワーク、データベースなどIT技術の基礎はもちろん、AIやビッグデータ、IoTといった最先端技術についても出題されます。
『経営全般』に関する基礎知識も問われ、個人情報などを扱う企業がIT技術を正しく活用するための法律をはじめ、ITを通した経営戦略やシステム戦略、マーケティングなども含まれます。『IT管理』では、プロジェクト管理の手法であるプロジェクトマネジメントや、システム運用の管理をするサービスマネジメントについても問われ、広範囲の知識を習得することができるわけです」
他のIT系資格取得の足掛かりになる
「合格後のステップとしては、ITエンジニアなら基本情報技術者試験へのチャレンジがおすすめです。
特にITパスポートと同じく情報処理技術者試験の一つに区分される基本情報技術者試験は、ITパスポートの出題範囲と共通する分野があり、テクノロジ系、ストラテジ系、マネジメント系の3分野が同じです。
知識を問われる問題は、2進数やアルゴリズム、計算問題などの難易度は上がりますが、ITパスポートの知識があれば、それを補う形で学習を進めていけます。あとは技能を問われる問題に重点を置くだけで合格できる可能性もあります。試験を突破したら、さらにレベルを上げて応用情報技術者試験を目指してみてください。
ITエンジニア以外の職種の方なら、情報セキュリティマネジメント試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。セキュリティ対策に特化した試験なので、機密情報や個人情報を扱う方には特におすすめです。
国家試験以外であれば、国際的な認知度も高いイギリス発のITILファンデーションの資格取得もおすすめ。情報システム部などでサーバーやネットワークの運用管理を行う方に向けた内容で、日本でも人気の資格です」
※「基本情報技術者試験」は2023年4月から出題形式、試験範囲が変更
就職・転職に活かせる
「国家試験なので、企業への就職や転職、社内での昇進のほか、大学への進学や進級にも役立つ可能性があります。特に企業はITの基礎知識を持った人材を求めています。最近、一般企業では採用活動のエントリーシートでITパスポートの取得や受験時のスコアを確認するケースが増えています。また、高校生に向けては大学進学の際に入試優遇制度の評価対象になる場合もあり、なかには単位認定を与えている大学もあるようです。
ただ、社会人に比べて学生の合格率がさほど高くはない点に着目すると、職場で実務に触れていなければITパスポートの内容を理解しづらい側面があるのかもしれません。特に企業の法務や経営、セキュリティに関わるストラテジ系の問題はイメージしづらいので、テーマ別の試験対策動画などで捕捉をしながらしっかり取り組みましょう」
ITパスポート試験の難易度
入門レベルの位置付けとはいえ、難易度を捉えにくいITパスポート試験。そこで、他の情報技術系試験と比較しながら難しさの指標となる合格率について分かりやすく紹介します。さらに、合格基準を踏まえた得点の目安も含め、プロの視点からITパスポート試験に臨む際の心構えを教えていただきました。
合格率は高い?
「ITパスポート試験の合格率は約50%といわれています。基本情報技術者試験は約30%、応用情報技術者試験が約24%ですから、ITパスポートは情報処理系の国家試験のなかでも合格率の高さがうかがえます。
基本情報技術者試験はパソコンを使って試験を行います。知識を問う試験はテクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の全60問で4つの選択肢から解答を選択し、技能を問う試験は全20問で複数の選択肢から解答を選択します。1問が数行にわたる長い設問があるため、長文読解を攻略しなければ太刀打ちできません。技能を問う試験の出題範囲はアルゴリズムとプログラミング、セキュリティ分野のみですが、プログラムの穴埋めなどがあり、ITパスポートと比べてハードルの高い試験だといえるでしょう。
一方、応用情報技術者試験は従来型の筆記試験です。採点の効率化を図るため、午前中の四肢択一の試験で合格点に達しない場合は、午後の試験は採点してもらえません。午後の試験は、長文問題に対して理由や改善策を答える記述式なので、文章での解答が得意な人には有利ですね。さらに、必須課題の情報セキュリティ以外は、自分の好きな分野の問題を選んで挑戦できるのもポイントです。ITエンジニアであれば、入社1年目に基本情報技術者試験、2〜3年目に応用情報技術者試験の取得を勧められる場合が多いようです」
合格基準
「本試験では、ストラテジ系(経営全般)、マネジメント系(IT管理)、テクノロジ系(IT技術)、この3つの分野でバランスよく正解をしなければ合格できない採点方式になっています。3分野の総合評価点が1000点中600点以上に達したうえで、それぞれの分野で1000点中300点以上を取れていれば合格です。
ただし、分野別の合格ラインにとらわれて『300点さえ取れば大丈夫』と、甘く見ていると本番は厳しい結果に。総合評価点なら8割程度、分野別スコアもそれぞれ半分の5割程度の得点を目指して試験に臨みましょう。とはいえ、合格基準の600点が偏差値50〜54に相当し、平均点を取ることができれば合格圏内に入る試験のため、気負う必要はありません」
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