話し方

話し方で損をしている? 話し方のコツやトレーニング方法をプロが解説

 

上司や同僚との会話から、大勢を前にしたプレゼンテーションまで、さまざまな状況で人と話すことが多いビジネスシーンでは、話の内容はもちろん、話し方が上手か否かで聞き手に与える印象が変わります。「えっと」「あの」といった言葉を挟みすぎたり、自信なさげな弱々しい声だと、どんなに革新的で素晴らしい提案でも相手に伝わりにくくなってしまいます。そんな状況を改善・回避するために重要な「相手に伝わる話し方」のコツを、北海道を拠点に活躍中のフリーアナウンサー・佐藤麻美さんに聞きました。

{ 目次 }

「話し方がうまい」とは
佐藤さんが出会った「話し方がうまい人」
「上手な話し方」がもたらす効果
話し方の基本・コツ
まずは基本を押さえる
「上手な話し方」のコツは5つ
より「上手な話し手」になるためのポイント&トレーニング方法
1.言葉の引き出しを増やす
2.聞き手への思いやりを忘れない
3.言葉に表情をつける
ビジネスや日常での「話し方」お悩みQ&A
Q1【ビジネス】プレゼンテーションで成功するための話し方のコツとは?
Q2【ビジネス】相手と認識の齟齬(そご)がないよう、イメージを共有しやすい伝え方とは?
Q3【ビジネス&日常】話していて面白い、話してよかったと思われる「人に好かれる話し方」とは?
Q4【ビジネス&日常】その場で臨機応変に話せるようになるには?
Q5【ビジネス&日常】話す力と同じくらい大事な「聞く力」を身に付けるコツとは?

監修者・佐藤麻美さんプロフィール

フリーアナウンサー・佐藤麻美
KADOKAWA SEMINAR(C)

フリーアナウンサー。1993年にHTB北海道テレビに入社。大泉洋、戸次重幸と共に全国を食べ歩くバラエティ番組「おにぎりあたためますか」では16年間MCを担当。2019年からフリーに転身し、司会やモデレーター、トークショー、講演会をはじめCMやテレビ出演など多岐に渡り活動中。現在、「そらち食の応援アンバサダー」として、空知地方24市町の口福食材をSNSで発信中。2022年7月には出身地・函館の「はこだて観光大使」に就任し、YouTubeの番組「なまら函館」で函館の魅力を伝えている。
>>佐藤さんの過去講演など詳細はコチラ

「話し方がうまい」とは

 そもそも「話し方がうまい」とはどういうことなのか。「しゃべりのプロ」でアナウンサーとして活動中の佐藤さんは、「人を引きつける話し方をする」ことだと言います。

 「『人を引きつける話し方』を私なりに分析してみると『わかりやすく話をする』『話す内容への熱量』『話し手の人間味がにじみ出るような話し方』が必須な要素だと思います。こういった『人を引きつける話し方』が『話し方がうまい』ということにつながるのかなと思います」(佐藤さん)

佐藤さんが出会った「話し方がうまい人」

 大物芸能人から街行く人まで、アナウンサーとしてさまざまな人と出会い、言葉を交わしてきた佐藤さん。その経験のなかでも、特に「この人は話し方がうまい!」と感じたのは、「おにぎりあたためますか」で16年間共演していた人気俳優・大泉洋さんだという。

 「大泉さんは、非常に豊かな“声の表情”の持ち主だな、という印象です。会話での間の取り方が上手で、聞き手の想像力をかき立てるような表現や話し方をする方です。話の構成でも、起承転結の“結”への持っていき方がすごく上手だな、と感じていました。16年間、お仕事をご一緒させていただいてとても勉強になりましたし、『人を引きつける話し方とはこういうことか』『フリートークとはこうあるべきなのか』というのを間近で体験できて、私にとって本当に宝物のような時間だったと思います」

「上手な話し方」がもたらす効果

 「声の表情が豊か」「会話の間の取り方が絶妙」「起承転結のある内容をしっかり“結”まで話す」といった要素が重要な「上手な話し方」。習得できれば、以下のような効果が期待できます。

□プレゼンテーションで、自分が伝えたいことが聞き手の心や記憶にしっかりと残る
□会議や打ち合わせなど意見や情報を交換し合う場面で、意見の押し付け合いではない健全なコミュニケーションが成立する
□聞き手にも話し手にも精神的な負荷が掛からず、「有意義な時間を過ごせた」という印象を与えられる
□「また会いたい」「じっくり話してみたい」という、“次”につながるきっかけになる

 ビジネスではもちろん、プライベートでもメリットが多い「上手な話し方」。その基本やコツを学んでいきましょう。

話し方の基本・コツ

まずは基本を押さえる

 「話し方がうまい」という印象を与えるには、コツを学ぶ前に押さえておくべきポイントがあります。

□しっかり声を出して発音をする
 「聞く人に自分の言葉が届くように発音するということがすごく大切です。なかでも、第一声のあいさつは、元気よくしっかりすることで聞き手に好印象を持ってもらえると思います。誰しも子供のころに言われたであろう『大きな声であいさつしましょう!』はコミュニケーションの基本であり、とても大事なことなんです」

□自分自身の心身が健康であること
 「人に何かを話したり伝えるうえで、自分自身の心と体が健康であることは、実はとても大事です。自分自身がいい状態じゃないと、ネガティブな言葉を選んだり、声に力がないために、なかなか真意が伝わりにくくなるといったことが考えられます。大事なプレゼンや会議の前夜は上質な睡眠を取るなど、心身のコンディションを整えることを意識してみてください」

「上手な話し方」のコツは5つ

1.起承転結をつける
 どんな話でも、要領を得ない抽象的なことばかりを言われると、明るくハキハキと話していても「話がヘタだな」という印象を持たれてしまいがち。話を伝えたいという場面では、起承転結をつけることは重要です。

 「プレゼンテーションでは、事前に資料を作成するなかで自然と起承転結に沿った内容で話を構成できると思いますが、会議やフリートークでは、緊張のあまり脈略のないことを延々と話してしまう方も少なくないと思います。そうならないように、次にお伝えする『考えをまとめておく』ことが大事になります」

2.考えをまとめておく
 自分の考えを人に発表したり、伝えたりする前に「一番伝えたいことは何か」ということを明確にしておくと、話の筋がぶれることなく話をすることができます。

 「自分の中でまとめたことが、本当に人に伝わるのかどうかを試すことも大事です。誰かに話してみることで、『ここはいらないな』『ここはもうちょっと膨らませた方がいいんじゃないか』といったことが明確になり、伝えたい内容がまとまってきます。NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、大泉さんが演じる源頼朝の『人に話せば考えもまとまる』というセリフがありましたが、まさに名言だと思います」

3.自分のわかることだけを話す
 自分がしっかりと把握していることのみを話すことは、「説得力のある話し方」につながる秘訣と言えます。

 「自分のわかることだけを話すとは、いわゆる等身大であること、だと思います。私はテレビ局に就職して3年目に、情報番組で飲食店のおすすめメニューを中継レポートする仕事を任されたのですが、言葉の引き出しが全然なかったために、『おいしい』以外の言葉で味を表現することにとても苦労しました。

 その時にまず考えたのが、表現するためのボキャブラリーを増やすことでした。グルメ漫画を読んだり、『おいしさの表現辞典』という本を読んで、自分の感覚を言葉にしようと頑張ったのですが、やはりどこか違うなと思ったんです。そこで、最終的に私が取った手段が、レポートするお店の料理を、中継前に自費で家族と一緒に食べることでした。家族の感想を聞きながら、自分の感覚もまとめていく中で、無理せず自分の等身大な表現を増やしていくことの大切さを学びました」

4.頭の中の引き出しを一つずつ開けていく
 「自分が何を伝えたいのか」を整理し、「イメージ記憶」として脳内に残す。そうすることで、大勢を前にした緊張度の高い場面や、予期せぬ失敗で立て直しが必要な場面でも慌てることなく、落ち着いた対応ができるようになります。

 「起承転結を押さえたとしても、それをどういう順番で出していくか、それを整理するうえで役立つ考え方です。例えば、伝えるべきことの1から4までを全部頭の中に入れ込むと、途中で3が抜けてしまった場合に慌ててしまうことがあります。そんな時のために『1段目から4段目までの引き出し』といったイメージと連結させて、起承転結で話すべきことを記憶していきます。文章を覚えるのではなく、自分が話したいポイントをそこに入れ込んでいく方法です。

 頭の中の引き出しを上段から開けるごとに起承転結を進めていく、という考え方をすると、2段目の話が終わりそうな時に質問を受けて、話が別の方向へ展開してしまったとしても、『次は3段目の引き出しだ』という意識があれば、慌てることなく話を本筋に戻せるようになります。この『イメージ記憶』を習慣づけていくと、どんな状況になっても、最後まで起承転結をうまくつけながら話を進められると思います」

5.結論から話す
 プレゼンテーションの基本として「結論から話す」というスタイルがよく知られています。出だしに結論を話し、結論に至るまでの過程など回りくどいと思われがちな説明を後回しにすることで、聞き手の興味・関心を引きつける手段です。

 「何気ない日常会話なら、特に結論のない話でも問題ないと思いますが、ビジネスシーンでは聞き手に、自分が何を言いたいのかを明確に伝える必要があります。互いの時間を有効活用するためにも結論から話し、『なぜならば』とその理由を伝えることで、『話し上手』という印象を与えられます」

より「上手な話し手」になるためのポイント&トレーニング方法

 「話し方の基本・コツ」を理解したあとは、さらに魅力的な話し手になるためのポイントとそのトレーニング方法について紹介します。

1.言葉の引き出しを増やす

 言葉のボキャブラリーを増やすには、他者の言葉に多く触れることが大切です。無駄のない表現を学ぶのなら新聞は最適。人間味あふれるさまざまな表現に触れるのならば、たくさんの人と会って話すことで、自分の中になかった感性や表現方法に出合えるはずです。

 「新聞を読んで、世の中の情報をしっかり収集することも大事なのですが、同じくらいにさまざまな情報を五感で感じることも大切だと思います。気になった場所があったら、そこに実際に行ってみる、話を聞いてみることで、自分の言葉の引き出しが多くなっていきます。例えば『すごい』という表現でも、自分が感じた『すごい』を具体的に人に伝えるための表現を模索することで、自分の感情が伴う声の表情がついた言葉を増やすことができると思います。そうすることで、話し手の個性が輝く言葉選びや話し方になると感じています」

2.聞き手への思いやりを忘れない

 「話していることが相手にしっかり伝わっているのか」「聞き手を嫌な気持ちにさせていないだろうか」。こういった配慮はビジネスシーンでは欠かせないもの。特に相手への敬意は、たとえ話し方が拙いものだったとしても、その思いが聞き手に伝わることで好感につながる大事な要素と言えます。また、何度も顔を合わせる商談の場合は、前回の反省をふまえて話し方を変えるといった工夫も効果的です。

 「話し終わった時に『ちゃんと伝わったかな』『もう少し表現を変えた方が伝わりやすかったかな』というように、自分の言葉に対して意識的になるだけでも、話し方は上手になると思います。また、聞き手に対して思いやりの気持ちや敬意を持つことで、話し手の思いを受け入れてもらいやすくなるので、ぜひ意識してみてください」

3.言葉に表情をつける

 「申し訳ございません」の一言でも、抑揚なく言葉を発するのと、謝罪の気持ちが込められた勢いのある声では、聞き手に与える印象は大きく異なります。言葉に自分の思いを乗せ、表情をつけることが『話し上手な人』への近道となるはず。

 「2021年11月に、北海道大学大学院工学研究院工学系教育研究センターで工学系の学生さんを対象に『コミュニケーション力は好奇心力』という人材育成セミナーを開催しました。その時に『あ』をさまざまな感情で表現することを行いました。優しい『あ』や、驚きの『あ』など、さまざまな『あ』を口に出してみることで、自分の声がどういった表情を反映できているのかを確かめられるので、ぜひ挑戦してみてください。

 また、人の言葉の表情は、声の高低と緩急の4つが軸となるので、この軸を意識しながら発声することも大切です。声と同様に顔の表情や姿勢も重要なポイントになりますので、ビジネスシーンではしっかりと背筋を伸ばし、堂々とした姿勢で臨まれるといいでしょう」

ビジネスや日常での「話し方」お悩みQ&A

 ここまでご紹介してきた「上手な話し方」のコツやトレーニング法を、次にあげるような日常の場面で最大限に生かしてみましょう。

Q1【ビジネス】プレゼンテーションで成功するための話し方のコツとは?

 「原稿に頼り過ぎず、とにかく自分の言葉で話すことが大切です。自分の言葉で話すということは、自分が誰よりも内容を理解していないとダメなので、内容がまとまったら、とにかく何度も人に聞いてもらい、自分の中に落とし込むことが一番大事です。その際には、話すスピードやトーンについても客観的な意見をもらうといいでしょう。

 自分の言葉で話すうえで、一文を短くすることはとても重要です。長々話すと、主題や伝えたいことが曖昧になりがちです。結論から伝え、その結論に至るまでの経緯を端的に伝えましょう。プレゼンは自分の意見を伝える場なわけですから、その思いを声に乗せることも大事です。そして、なにより噛むことを恐れないことですね。堂々とした態度で挑んでください」

Q2【ビジネス】相手と認識の齟齬(そご)がないよう、イメージを共有しやすい伝え方とは?

 「頭の中の引き出しを一つずつ開けていく方法で、話を進めましょう。引き出しの中に記憶や情報を入れる際には、かなり具体的なイメージを思い描いているはずです。そのイメージを相手と共有するだけで会話がスムーズになると思いますが、ここで重要なのは自分のイメージを的確な言葉に落とし込む作業です。日頃からボキャブラリーを増やしたり、さまざまな体験をして自分の言葉で感情を表現するテクニックを身に付けておくことで、自分の想像している事柄を正確に相手に伝えられるようになるでしょう」

Q3【ビジネス&日常】話していて面白い、話してよかったと思われる「人に好かれる話し方」とは?

 「私がインタビューをする時は、対峙している人や物に対して100%自分が真正面で向き合っているかどうかをいつも大事にしています。人間同士の会話なので、相手への敬意や『その人のことを知りたい』という気持ちを重視していますね。そういった真摯な姿勢で会話をすることにより、『話をしていて面白い』や『話してよかった』という感想を抱いてもらえることにつながると思います」

Q4【ビジネス&日常】その場で臨機応変に話せるようになるには?

 「対峙している人や物に対してどれだけ好奇心や興味を抱いているかが、大きく関わってくると思います。興味を持つことが相手への敬意につながるだけでなく、相槌や相手の答えに対して深掘りできたり、予想外の反応に対しても臨機応変に話せるようになるのではないでしょうか。さまざまなことに対してアンテナを張り、会話のネタを収集しておくと、精神的な余裕を持てるのでオススメです」

Q5【ビジネス&日常】話す力と同じくらい大事な「聞く力」を身に付けるコツとは?

 「『共感力』が一番大事だと思います。すべてに対して共感することが難しい場合でも相手の言うことを否定せず、まずは受け止めて聞く、という姿勢を持つことが重要です。そして、わからないこと、聞き取れなかったことは素直に『それはどういうことでしょうか?』と教えてもらうことも必要です。わからないことをわからないままにして話を進めてしまうと、後々大変なことになる可能性も。そうならないように、しっかりと相手の話に耳を傾け、敬意を持って向き合うよう心がけてください」

 人に良い印象を与える話し方の極意を「明るく前向きな言葉を使うこと」だと教えてくれた佐藤さん。プレゼンテーションや会議、打ち合わせといった時間を楽しく有意義なものにしようという意識と、聞き手への思いやりや敬意。それらが、実りある対話への必須要素であることを念頭に置きながら、コミュニケーションを図ってみましょう。きっと、以前よりも心の通い合いや手応えを感じられる会話ができるようになっているはず。

(取材/執筆 中村実香)

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