アンガーマネジメント

アンガーマネジメントをメンタルコーチングのプロが解説!ビジネスから子育てにも役立つスキルをマスター

アンガーマネジメントをメンタルコーチングのプロが解説!ビジネスから子育てにも役立つスキルをマスター

 アンガーマネジメントは、怒りの感情の対処法として昨今注目されています。専門の資格取得もでき、研修で取り入れる企業も増えているようです。そこで、神経言語プログラミング(NLP)をベースに「感情をコントロールする方法」を研究している佐久間馨さんに、“怒り”を含め、感情をコントロールできるようになるためのトレーニング方法を教えてもらいました。

{ 目次 }

アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントとNLPはどう違うのか
“怒り”とうまく付き合う方法
“怒り”が発生するメカニズム
1 “怒り”のもとになる感情を言語化して伝える「6秒ルール」
2 “あたり前”の枠組みを変え「〜するべき」というこだわりを捨てる
3 “反対側の自分”で客観的に見つめる「自己対話法」
「怒り」の感情とうまく付き合うことが大事
ネガティブ感情全般をコントロールするテクニック
1 視点を変えポジティブに考える「リフレーミング」
2 否定的な言葉をポジティブにシフトする

監修者・佐久間 馨(かおる)さんプロフィール

有限会社ゴルフ科学研究所代表取締役・佐久間 馨
有限会社ゴルフ科学研究所代表取締役・佐久間 馨KADOKAWA SEMINAR(C)

有限会社ゴルフ科学研究所代表取締役。アマチュアのゴルフ選手時代の経験から、誰でもパープレーができる合理的なスウィング(Sスウィング)を開発。またプレー中に最高の精神状態が生み出せる自己対話法を神経言語プログラミング(NLP)と融合させて「Sメソッドゴルフ」を確立した。ゴルファーだけでなくメジャーリーガーのメンタルコーチを務めるとともに、言葉の使い方を中心にセミナーや企業向けに講演会を行っている。
また、指導者としても活躍し、2010ゴルフダイジェストアワード「レッスン・オブ・ザ・イヤー」を受賞。著書に『ひじを緩めればあなたのゴルフは見違える』(KADOKAWA)、『練習嫌いはゴルフがうまい!』(ゴルフダイジェスト新書)、『ゴルフは突然うまくなる』(現代書林)などがある。
≫佐久間さんの過去講演など詳細はコチラ

アンガーマネジメントとは?

 実際にそのテクニックを実行してみると、上手くいかず断念してしまう人も多いのがアンガーマネージメント。そこで、今回はやり方をマスターして、怒りを上手に活用する方法や怒りを自己成長に利用する方法を実践してみましょう。

 「アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで生まれた怒りの感情とじょうずに付き合うための心理トレーニングです。読んで字の如く、怒りを管理することで怒らないことが目的ではなく、怒ること・怒らないことの線引きをうまくできるようになることを目指しています。しかし、実際にアンガーマネジメントのテクニックをよく理解せずに実践してみると、『怒りを我慢して内にとどめなくてはならない』と思ってしまい、かえってストレスをため込んでしまう人も見受けられます」(佐久間さん)
 

アンガーマネジメントとNLPはどう違うのか

 佐久間さんの研究する自己対話法「NLP(神経言語プログラミング)」とは、どのようなものなのでしょうか。
 
 「NLPは、Neuro Linguistic Programing(ニューロ・リングイスティック・プログラミング)の略語です。1970年代にアメリカで誕生した心理学と言語学をもとにしている学問です。今、ビジネスシーンやスポーツ界、教育などで注目されていて、別名『脳の取扱説明書』とも言われています。
 
 アンガーマネジメントとは、“怒り”に着目し、コントロールするためのテクニックを指し、一方で、NLPは怒りだけではなく、『感情全体をコントロールして安定させる』という広い考え方です。NLPで感情全体をコントロールできると、人付き合いの改善や生産性の向上はもちろんのこと、すべてを肯定的に受け止められるので自分自身の幸福度を高めることができます」
 
 NLPをベースにメンタルをコントロールできるようになると、どんな効果が得られるのでしょうか。

 「神経言語学というだけあって、NLPは言語を使ってメンタルのコントロールをしようというメソッドです。本来その人がなりたい姿に近付く言葉や潜在意識に働きかける言葉をうまく使うことで、感情をコントロールできるようになります。それがいい方向に働いて、なりたい自分に近付き、自己肯定感もアップします」

“怒り”とうまく付き合う方法

 佐久間さんが提唱するのは、アンガーマネジメントとNLPのテクニックをあわせることで、メンタルをコントロールし、”怒り”とうまく付き合う方法。具体的なやり方を解説します。

“怒り”が発生するメカニズム

 まず、”怒り”はどのようなメカニズムで発生するのでしょうか。
 
 「怒りが表に出る前には、必ず否定的な何かの感情が湧いています。それは例えば、『不安』『辛い』『悲しい』『疲れた』『嫌だ』『寂しい』『驚き』などのネガティブなもので、一次感情と呼びます。その一次感情をもとに、自分でも気付かないうちに増幅し表に出てくるのが二次感情の“怒り”です。アンガーマネジメントは、“怒り”が発生した後にどう処理するかというアプローチが多いですが、手前の一次感情の段階でうまく対処できれば怒りを別の表現に変えることができます」

1 “怒り”のもとになる感情を言語化して伝える「6秒ルール」

 アンガーマネジメントには「6秒ルール」という方法があります。怒りの感情が発生したら、グッと堪えて6秒数えます。大体の怒りは一過性なので、6秒経てば怒りが収まっていき、冷静に自身を見つめ直せるというものです。

 「誰しも、想定外のことが起こると驚きます。『驚き』は怒りの感情のもとになり、そこで瞬間的にカッとなってしまうと、言わなくてもいいことを言ってしまいがち。言った瞬間はスッキリするのかもしれませんが、後々モヤモヤしたり……。それを防ぐために、心の中で6秒数えることで冷静に対処する、という方法は有効です。しかし6秒をただ無理して抑えるだけだと失敗してしまう人もいます」

 従来の「6秒ルール」では、6秒経っても怒りが収まらず、かえってストレスをため込んでしまう人もいるようです。どのように対処したらいいのでしょうか。

 「そこで提案したいのが、6秒の間に起きた事柄の本質を考えて、怒りの原因となる一次感情を言葉にして相手に伝えるという、新たな形の6秒ルールです。重要なのは『こんな風に言われて自分は悲しかった』など自分の真意を伝えることで、相手には怒りを伝えることなく円滑にコミュニケーションを取ることができます」

 特に感情的になりやすい子どもに対しての言葉掛けにも有効だと佐久間さんは言います。

 「子どもが帰ってくるのが遅くなると親は『どうして遅くなったの!誘拐されたらどうするの!』と怒ることがよくあります。そんな時は、『心配していたよ。いなくて悲しかったよ』と怒るきっかけになった気持ちを伝えると、語調も穏やかになり、子どもにも『なぜ帰りが遅くなるといけないのか』が伝わるでしょう」

 NLPでは投げかける言葉を大事にしています。怒った感情を鎮めることに考えが行きがちですが、そもそも怒りになる前の感情(一次感情)が何なのかを判断し、それを言葉で相手に伝えるようにしてみましょう。

2 “あたり前”の枠組みを変え「〜するべき」というこだわりを捨てる

 一次感情で処理し、そもそも怒りを発生しにくくする方法として効果的なのは、「普通を変える」ということだと佐久間さんは言います。詳しくは後述しますが、NLPにおける「リフレーミング」にも通じる考え方です。アンガーマネジメントでも、「〜するべき」「〜はず」という理想や、自分にとっての「あたり前」が裏切られた時に“怒り”が発生すると言われています。

 「先ほども述べたように、想定外のことが起きると驚き、それが怒りにつながります。ですが、それが想定内で『こんなこともあるよね』と思えたら? 怒る気にならないでしょうし、『そういうものだろう』と納得できるでしょう。例えば車を運転していて、前の車に急ブレーキを踏まれたり、横断歩道にいる人が急に飛び出してきたりしたとします。何も起きないことが当たり前だと考えていると、不測の事態にびっくりして、『何でこんなに危ないことをするんだ!』と怒りにつながりますよね。しかし、『運転中には突然のハプニングが起こるものだ』という考えを常々持っていれば、ある程度のハプニングは想定内のこととして対処できます」

 前提の考え方を変えて自分にとっての”あたり前”を見直し、「こうあるべき」というこだわりを手放してみると、怒りの感情が生まれにくくなるかもしれません。

3 “反対側の自分”で客観的に見つめる「自己対話法」

 また、NLP独自の「自己対話法」も有効だと佐久間さんは言います。

 「否定的に物事を考えている状態のままでいると、怒りの感情に飲まれるだけでなく、冷静な判断ができず何をやってもうまくいかないもの。だからこそ、意識の中にもう1人の肯定的な自分を作って、物事を客観的に見ることが重要です。もう1人の肯定的な自分からは、自分自身や周囲の状況がどう見えているかを想像しながら対話をしていくことで正しい判断ができるのです」

 自己対話法とはその時の自我と“反対側の自分”を作り出して対話すること。「うまくいくわけがない」と否定する自分がいたら「絶対にうまくいく」と肯定的な自分を、弱気な自分だったら強気な自分を、強引な自分だったら慎重な自分をというふうに。一方的な考え方にならず、相対的に判断できます。“反対側の自分”の姿・動きは具体的に想像することが重要。これを応用すれば相手の気持ちになって考えることもできるようになるそう。

 「例えば、部下を叱った時、部下が席から離れたら、そこに自分が座って、今自分が部下に言ったことを振り返ってみましょう。『こんな顔で、こんな言葉を喋っていたのか』と自分の姿を客観的に感じることで冷静になれますし、相手の気持ちにもなれるでしょう」

 佐久間さんはプラスハンディを持つトップアマであり、現在はゴルフ科学研究所を設立し、ゴルフ研究の第一人者としても活躍。この自己対話法を応用した佐久間さん独自のメソッド「NLPゴルフ」にも定評があります。
 
 「例えば、ゴルフでパットを打つ前に、これから打つラインを離れて確認するという動きがあります。ただその行為をするだけでなく、あと何秒か後に打つ自分の姿をその位置から想像してみることで、“反対側の自分”を生み出し、その自分と対話をすることができます。そうすることで、課題の解決策が見付かることもあります」

 悩んだ時は客観的なもう1人の自分を生み出し、対話してメンタルをコントロールする。自己対話法はゴルフ以外にも、ビジネスシーンや子育てといった日常においても取り入れることができるでしょう。

「怒り」の感情とうまく付き合うことが大事

 “怒り”は悪いこととして捉えられがちですが、実はとても大切なことです。

 「怒りという感情は人間にとってはものすごく大切な感情。怒り=『なぜこうじゃないんだろう』と考える感情であり、それがあるから、技術や医療などさまざまなことが改善されて進化します。ただ、怒ることによって周りの人を不愉快にさせたり、自分の可能性を閉ざしてしまったりもします。だから、前述の通り、一次感情である『悲しい』『寂しい』など、自分が今どんな感情にあるのか、怒りのもとの感情を相手にシェアする習慣がつくといいですね」

ネガティブ感情全般をコントロールするテクニック

 ここまでは“怒り”のコントロールに特化しましたが、応用編として怒りを含むネガティブな感情全般への対処方法についても解説します。

1 視点を変えポジティブに考える「リフレーミング」

 「失敗や挫折など否定的な感情になるような事象には、『学び・成長につながる』といういい側面もあります。NLPにおいて、『見方を変える』『枠組みを変える』ことを『リフレーミング』と言いますが、まさにこれを実践することで、否定的な事象が起こったとしても、それのいい側面に目を向けられます。いい側面に目をむけると、否定的な体験も『今の自分に必要なこと』と肯定的に受け止められ、乗りこえることに対して意欲的になります。また『自分は今、成長している自分になれている』と、自己肯定感にもつながります」

 ゴルフ、仕事はもちろん、人生のどんなことにも当てはまりそうですね。

 「ゴルフは実は80%がメンタル勝負で、振り方やショットなどの技術的な部分は20%程度。つまり、それぐらい技術面では簡単なものだと私は思っています。うまくいかないとみなさんが感じるのは、理想が高過ぎるから。過去の成功体験に基づく理想のラインに達しなかった時に、怒りが生まれたり落ち込んだりするのです。
 
 『人生は思い通りになるもの』と思っていると少しの失敗でも落ち込んでしまいます。一方で、『人生はちっとも思い通りいかないもの』と思っていると、仕事でつまずく場面があっても落ち込み過ぎず、『次はこうしよう』と前向きな考えにシフトでき、成長にもつながります。営業マンが100社に営業をかけて100社と契約成立することはまずありませんよね。だから『ここまでできていれば自分としてはOK』と適切な基準を設けて、自己を肯定して考えることが大切です」

2 否定的な言葉をポジティブにシフトする

 また、佐久間さんが推奨するのが、否定的な言葉をポジティブな言葉にシフトするという方法です。

 「『この問題は難しい』と思う時、『難しい』=『面白い』と考えを変えてみるのです。このように、『難しい』など否定語をどう言い換えたら楽しくなりそうか、否定的な出来事に対してどう感じられたら気分が良くなるのか、日ごろからシフトするトレーニングをしてみるといいでしょう。それができると課題にぶつかった時にも『何とかなる』と考えられ、自信が付きます」

 「なぜ」「そんなはずはない」「わからない」「面倒くさい」「嫌だ」「嫌いだ」「無理」「つまらない」「怖い」「間違っている」「やらないといけない」など、否定的な言葉はたくさんあります。これらを「いいね」「おもしろそう」「やってみよう」「何とかなる」「できる」など前向きな言葉に変えていくところから始めましょう。

【ゴルフ選手のコーチングでもよく使う否定語の言いかえ例】
□「失敗してしまった」⇒「この経験は必ず役に立つ」「いい経験をしてるね」
□「何をやってもうまくいかない」⇒「うまくいかないことしかやっていないのでは?」「うまくいくことを探してみよう」
□「~しないといけない」⇒「~するだけで○○になる」
□「そんなはずはない」⇒「そんなこともある」「そんな人もいるよね」
□「できない」⇒「とりあえずやってみよう」

 否定的な感情は誰しも必ず湧くものです。「怒り」の感情は100%避けられるものではありませんし、時には必要な場合もあります。怒りに対する基本のスタンスは、「怒り」になる前の一次感情に対し適切に対処し、柳のようにさらっとかわすこと。怒りの感情に飲まれず、コントロールすることでメンタルが安定し、他者とのコミュニケーションが円滑になり、ビジネスのパフォーマンスが高まるでしょう。また、怒りをうまく利用すれば自身の成長につなげることもできます。
 
 「否定的な感情は、すべて言葉にできます。モヤモヤしたり、カッとなってしまったりしたら、言葉にするのが難しい感情を敢えて言葉にしてみましょう。今起こっていることはどういうことなのか、原因は何なのか。正体のわからない不安感や恐れを抱く人は、その気持ちを言語化できない人が多いように思います。恐れずに今の自分の感情を言葉にしてみると、“怒り”の解決策に辿り着いたり、気持ちが穏やかになったりといい方向へ向かうはずです。日本語は細かい感情についての言葉がたくさんありますので、感じたことを素直に言葉にしてみてはどうでしょうか」

(取材/執筆 濱口真由美)

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参考書籍
『ひじを緩めればあなたのゴルフは見違える』
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