ケアマネージャー

ケアマネージャー(介護支援専門員)とは? 仕事内容・年収・資格の取得方法などを試験対策のプロが解説

ケアマネージャー(介護支援専門員)とは? 仕事内容・年収・資格の取得方法などを試験対策のプロが解説

 介護を必要とする人が、適切な介護保険サービスを受けられるようにケアプランを設計するケアマネージャー(介護支援専門員)。この仕事に就くには、「介護支援専門員実務研修受講試験」の受検が必須であり、その合格率は20%前後と、決して高くありません。そこで今回、ケアマネージャー受験対策講座に定評があるベストウェイケアアカデミー学校長の馬淵敦士さんに、試験対策からケアマネの仕事内容、役割などを詳しく伺いました。

{ 目次 }

ケアマネージャーとは?
仕事内容
給与・年収
介護施設所属のケアマネージャーの仕事
居宅介護支援事業所でのケアマネージャーの仕事
主任ケアマネージャーの仕事
ケアマネージャーになるには?
介護支援専門員実務研修受講試験とは?
求められる知識
受験資格
合格率・難易度は?
受験にかかる費用は?
一部の受験科目免除の制度は廃止に
試験合格のためのポイント
ポイント1 基本用語を理解する
ポイント2  頻出度が高い分野・範囲を重点的に、出題が少ない分野は深追いしない
ポイント3 正解率の高い問題を間違えない
ポイント4 時間配分を意識して過去問を解く
ポイント5 良問にトライし基礎力を上げる
2025年問題を目前に、ケアマネージャーの需要はさらに高まる

監修者・馬淵敦士さんプロフィール

介護支援専門員(ケアマネジャー)試験講師/ベストウェイケアアカデミー代表・馬淵敦士
介護支援専門員(ケアマネジャー)試験講師/ベストウェイケアアカデミー代表・馬淵敦士KADOKAWA SEMINAR(C)

介護支援専門員(ケアマネジャー)試験講師/ベストウェイケアアカデミー代表。2007年1月に株式会社ベストウェイを設立、大阪府豊中市を中心に、「かいごの学校 ベストウェイケアアカデミー」を設立し、介護人材の育成を行っている。介護系受験対策に精通し、介護福祉士、ケアマネージャー受験対策講座を各地で開催、1500人以上を指導し、多数の合格者を輩出している。著書に『ゼロからスタート! 馬淵敦士のケアマネ1冊目の教科書 2023年度版』(KADOKAWA)がある。近畿大学の非常勤講師も勤める。
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ケアマネージャーとは?

 通称「ケアマネ」とも呼ばれるケアマネージャー。ケアプラン(要支援・要介護の認定を受けた人が、適切な介護保険サービスを受けるための計画書)を作成する人というイメージがありますが、働く施設によって違いがあります。試験にトライするか検討するために、まずはその仕事内容を知っておきましょう。

 「介護保険で受けられるサービスを利用するには、利用者がどのようなことに困っているかをケアマネジメントによって分析しなければならない決まりがあります。例えば利用者が『お風呂に入りたい』と希望したら、『デイサービスセンターなどに申し込み、施設で入浴をする』または『訪問介護による自宅入浴を利用する』などという選択肢が出てくると思います。この時、その利用者はサービスを受けなければいけないほど介護が必要な状態なのか。必要な場合、デイサービスと訪問介護のどちらが適したサービスなのかを第三者の視点で判断する必要があります。利用者の話を聞き、どんなことにどのくらい困っているのかを正しく分析する。この一連の流れがケアマネジメントであり、その役割を担うのがケアマネージャーです」(馬淵さん・以下同)

仕事内容

 「ケアマネージャーは、わかりやすくいうと、利用者と介護サービスを提供する事業者をつなぐ存在です。ケアマネージャーの仕事内容はケアプランを作ることに限定されると思っている人も多いようですが、ケアプランの作成はケアマネジメントの流れの1つにすぎません。ケアプランを作る前には利用者が抱える問題点を把握するための課題分析を行い、作った後もそのプランが正しく動いているのかを確認する必要があります。

 また、どの事業者を利用するかを決めるのは利用者自身ですが、たいていの利用者は事業者に関する詳しい情報を持っていません。ケアマネージャーは複数の事業者の特徴を把握し、利用者に適した事業者を紹介する必要があります」

給与・年収

 「一般的にケアマネージャーの年収は350万円前後だと言われています。以前は、ケアマネージャーと介護職の給料は1.5倍程度の差がありました。けれども今はほとんど変わらないのが実情です。その理由は、ここ数年、国が介護職の給与を上げようと働きかけてきたことが挙げられます。

 ケアマネージャーは決して高収入とは言えない仕事だと思いますが、利用者との触れ合いのなかでやりがいを持って働けます。以前、私もケアマネージャーとして働いていましたが、お金だけでははかれない価値がこの仕事にはたくさんあると日々の業務から感じていました」

介護施設所属のケアマネージャーの仕事

 「寝たきりなど、常に介護が必要な人が対象の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)といった介護施設に勤務するケアマネージャーは、入所者のケアプランを作成します。担当する利用者数上限が100名なので、1人で多くの利用者を担当できます。さらに、ケアマネージャーの業務だけでなく、生活相談や介護業務をサポートするなど、施設内のさまざまな業務に携わることが多いのも特徴と言えます。

 ケアプランを作成する際には、介護関係者(介護職員・介護福祉士・訪問介護員など)、医療関係者(医師)、そして利用者やその家族などを集め、サービス担当者会議を行います。介護施設の場合、会議の参加者は施設内のスタッフが中心なので、会議日程の調整がしやすいというメリットがあります。また、利用者に何かあった時でも、他担当者への伝達が比較的スムーズに行えるのも仕事のしやすさという点でメリットだと思います」

居宅介護支援事業所でのケアマネージャーの仕事

 「一方で、自宅で暮らす要介護認定者のためにケアプランの作成やサービス調整を行うのが居宅介護支援事業所(要介護認定を受けた人が介護サービスを利用しながら自宅で生活できるよう支援する事業所)に所属するケアマネージャーです。ケアマネージャーの勤務先は、この居宅介護支援事業所が一番多いと思います。

 居宅介護支援事業所のケアマネージャーは、利用者35人に1人配置することになっており、担当件数が40件を超えると介護基本報酬が減っていく逓減性が導入されます。

 重要な業務の1つに、サービス担当者会議の実施がありますが、居宅介護支援事業所の場合、利用者に関わる関係者がそれぞれ違う組織に属しているため、全員と連絡を取って都合の良い日時を調整しなければなりません。これにはかなりの手間と時間がかかります。また、利用者が入院するなど何か不測の事態があった場合も同様に、関係者にそれぞれ連絡を取る必要があります。一方で、居宅介護支援事業所のケアマネージャーは、他の介護業務などを兼務することなくケアマネジメントに集中できるという大きなメリットがあります」

主任ケアマネージャーの仕事

 「主任ケアマネージャーの正式名称は『主任介護支援専門員』で、2006年に介護保険制度が改正されたことで新たに設けられたケアマネージャーの上位資格です。ケアマネージャーとして5年以上の実務経験を積み、研修を受講することで、この資格が取得できます。 居宅介護支援事業所や地域包括支援センターに所属し、ケアマネージャーとしてケアマネジメントを行うことに加え、他のケアマネージャーへのアドバイスや指導、地域のケアマネージャーのバックアップなどを担います」

ケアマネージャーになるには?

 ケアマネージャーは、各都道府県が認定する公的資格です。ここからは、ケアマネージャーとして働くために必要な介護支援専門員資格の取り方、試験を受けられる人の条件、実務経験はどれくらい必要なのか、さらには試験で求められる知識などについて解説してもらいます。

介護支援専門員実務研修受講試験とは?

 「ケアマネージャーになるには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、合格後は研修を受講して修了する必要があります。試験は毎年1回、10月ごろに実施され、 『介護支援分野』『保健医療福祉サービス分野』の2分野から出題されます。『介護支援分野』は、『介護保険制度の基礎知識』『要介護認定等の基礎知識』『居宅・施設サービス計画の基礎知識』などから25問、『保健医療福祉サービス分野』は『保健医療サービスの知識』などから20問と『福祉サービスの知識』などから15問、合計60問を120分以内で解くことになります」

求められる知識

 「介護支援専門員実務研修受講試験は介護保険法に基づいていますから、この法律を理解する必要があります。とはいえ全部を覚える必要はありません。60問すべてを正解できなくても、『介護支援サービス』の分野、『保健医療サービス』と『福祉サービス』を合わせた分野、それぞれのボーダーラインを超えれば合格できるからです。合格点は年度によって多少の違いはありますが、目安としては正答率60~70%で合格です。

 受験者の6、7割は福祉系の仕事に携わっている人ですが、福祉サービスのあらゆる現場のことを知っているわけではないと思います。例えばヘルパーステーション(在宅で生活している要支援、要介護認定を受けた人に、ホームヘルパーを派遣してする訪問介護事業所)でヘルパーとして働いている人は、訪問介護に関する知識はあっても、介護老人福祉施設のことはよくわからないものです。そうした他の事業者についての知識も試験では求められます」

受験資格

 「ケアマネージャー試験には、一定の国家資格を有し、業務の実務経験が通算5年以上、従事した日数が900日以上あるという要件を満たした人に受験資格があります。ケアマネージャー試験の受験者で最も多い職種は介護福祉士ですが、介護福祉士の資格を取得するには『介護現場で3年以上の実務経験』と『介護福祉士実務者研修の修了』が必要です。つまり、未経験・無資格からケアマネージャーになるには最短で約8年かかることになります」

※受験資格となる一定の国家資格:医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、管理栄養士、精神保健福祉士

 「上記の要件を満たしていなくても、介護施設などで以下の相談援助業務に、通算5年以上、従事した日数が900日以上の勤務実績があれば受験資格を得られます」

※受験資格となる相談援助業務:生活相談員(特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護など)、支援相談員(介護老人保健施設における支援相談員)、相談支援専門員(計画相談支援、障害児相談支援における相談支援専門員)、主任相談支援員(生活困窮者自立相談支援事業などの主任相談支援員)

合格率・難易度は?

 「ケアマネージャー試験の合格率は年度によって多少の変動はありますが、平均すると20%前後です。介護福祉業界の資格の中では難関資格だと言われますが、私は世間が考えているほどの難しさではないと思っています。

 合格率が低いのは、なかなか勉強する時間を作れないという受験者の生活環境が関係していると思うからです。受験者の多くは、現場で責任ある仕事に携わっている立場や、仕事と家庭を両立させつつ子育ても頑張っている世代が少なくありません。自分の時間を作ることさえ難しい日常の中で、資格取得に向けた勉強をするのは大変です。しかし、ケアマネージャーの試験問題は、ポイントをおさえていれば解答できるものばかりです。合格率の低さに惑わされないことが大切です」

受験にかかる費用は?

 「ケアマネージャー試験は、各都道府県によって試験主催者が違うため受験料も全国一律ではありません。相場は8,000円~15,000円程度です」

一部の受験科目免除の制度は廃止に

 「以前は、ある特定の国家資格を有している人は、一部科目が免除されていましたが、2018年にその制度は廃止されました。現在では、受験者全員が同じ条件で試験を受けています」

試験合格のためのポイント

 忙しい毎日の中、時間を作り出して勉強する以上、一発合格を狙いたいもの。「難関資格」と言われていますが、モチベーションをコントロールしつつ勉強を習慣化したあと、攻略するための「5つのポイント」をおさえれば合格する確率が上がります。

 「何から始めるか、これが何より重要です。最初は『絶対、合格するぞ!』とモチベーションが最も高くなっている状態ですが、それをある程度コントロールすることが、受験対策では大切になってきます。例えば、モチベーションが高いと最初からテキストを何冊も準備してしまいます。けれども買いすぎたテキストの山を見たら『これを全部やるのか……』と気が重くなりかねません。また、張り切って『毎日1時間は勉強しよう!』と無理なスケジュールを組むと三日坊主になって挫折してしまいます。

 最初はハードルを下げ、寝る前に5分間だけテキストを見る。それだけで十分です。大事なのは、続けること。慣れてきたら徐々にテキストと向き合う時間を延ばしましょう。2か月くらい続けるとそれが習慣になり、もっと勉強したいという意欲もわいてきます。文章だけではわかりにくいところは、受験対策を解説している動画で学ぶなど工夫すると理解できることが増え、面白くなってきます。こうして、段階を経て勉強することが習慣化したら、次から解説する『5つのポイント』をおさえて本格的に勉強していくことをおすすめします」

ポイント1 基本用語を理解する

 「『アセスメント(利用者の状態や取り巻く状況に関する情報を収集・分析し、ニーズや課題を明確にするために行う評価や査定)』『モニタリング(ケアプランに沿って適切な介護サービスを提供できているかの確認)』など、日常の業務では使わない専門的な言葉も、試験では多く出てきます。ただ単に言葉だけを覚えようとするのは、英語学習で単語をたくさん覚えても英会話ができないのと同じ。その用語がどのような時に使われるのかを理解しながら、言葉の意味を覚えていくといいでしょう」

ポイント2  頻出度が高い分野・範囲を重点的に、出題が少ない分野は深追いしない

 「毎年のように出題される分野がある一方で、5年に1回くらいしか出題されない分野もあります。出題される可能性が低い分野よりも、出題される頻度が高い分野を重点的に勉強するのが得策です。しかし、独学でこの傾向を見つけるのは難易度が高いため、出題傾向を知りたい場合は、受験対策の専門家による講座や指導を受けることがおすすめです」

ポイント3 正解率の高い問題を間違えない

 「『薬剤には副作用がある=○』、『介護職主導で介護を行う=×』など誰でも解答しやすい問題は確実に点数を取れる問題ですから、間違えてしまうのはもったいないです。意識して覚えるようにしましょう。当たり前のことのようですがとても大事なことです」

ポイント4 時間配分を意識して過去問を解く

 「60問を120分で解答すると聞くと、1問あたり2分で解かなければならないと考える人がいます。しかし簡単な問題もあれば難しい問題もあるので、すべて2分で解くと決めるのはリスクが大きすぎます。そこで過去問題を解く時は、『この問題は30秒で解く』『この問題には5分使おう』というふうに、時間配分を意識するようにしましょう」

ポイント5 良問にトライし基礎力を上げる

 「問題集の中にはいわゆる『重箱の隅をつつくような問題』ばかりを集めたものもあります。難しい問題が解けたという達成感を得られるかもしれませんが、そうした問題ばかりやっていると基礎がわからなくなる恐れがあります。特に試験直前になると、『難しい問題もやっておいたほうが安心だ』と思い、そういった問題ばかり練習する人がいますが、かえって逆効果です。ケアマネージャーの試験対策では、基礎をしっかり理解して覚えることが資格取得の近道です」

2025年問題を目前に、ケアマネージャーの需要はさらに高まる

 「2023年、団塊の世代のおよそ7割が75歳以上の後期高齢者になります。さらに2025年には国民の4人に1人、つまり国民の2割が後期高齢者という超高齢化社会を迎え、これは『2025年問題』と言われています。介護業界全体の需要がさらに高まり、ケアマネージャーも今以上に必要とされると思っています。

 また、ケアマネージャーの仕事は、AIにとって代わられるのではないかという話をよく耳にしますが、私は、ケアマネージャーの仕事にはAIにできることとできないことがあると思っています。例えばケアプランの項目作成はAIにできても、利用者の深いニーズを引き出すことは、ケアマネージャーと利用者の信頼関係があるからこそできるものです。利用者とのコミュニケーションが好き、困っている人に寄り添い生活を支えたいと思う方は、ぜひケアマネージャーを目指してみてください」

(取材/執筆 嶋崎千秋)

◆関連情報
動画【トップ講師がケアマネ試験合格の基本をイチから教えます!】馬淵敦士のケアマネジャー試験 スタートアップセミナー
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参考書籍『ゼロからスタート!馬淵敦士のケアマネ1冊目の教科書 2023年度版』
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