書籍紹介

激動の世界を生き抜くための、国家のカタチと外交戦略

書籍レビュー『地政学入門』(佐藤 優 著)
KADOKAWA SEMINAR(C)

 揺れるヨーロッパ、泥沼化する中東情勢、世界に広がるテロ・難民問題、覇権国家の思惑など、複雑に 動く世界情勢。これを読み解くための教義、かつては時代遅れの学問とされながら、近年その重要性がクローズアップされている「知っておくべき地政学の基本」を伝授します。

世界のリアルを知るために大切なこと

 レクチャーするのは元外務省主任分析官、各国インテリジェンスとのパイプを持ち、『国家の攻防/興亡』『日露外交』『帝国の時代をどう生きるか』など、多数の著書を出版している佐藤優氏。
今も昔も変わらない、世界を動かす「見えざる力の法則」とは?

 広辞苑によれば、地政学とは「政治現象と地理的条件との関係を研究する学問」とあります。国家は「ある決まった場所」に存在しており、地理的な特徴も様々。

四方を海に囲まれている。
国境がすべて陸地にある。
高い山がある。
大きな川が流れている。
国土の大部分が砂漠である。


 このような条件が、政治経済や安全保障、外交戦略に大きな影響を及ぼすわけです。しかしながら、著者の佐藤優氏は「世界を深く理解するためには、地理的条件のみならず、目に見えないものも大切」と説きます。

 「目には見えないけれども、確実に人々を動かす宗教。あるいは文化的な了解と言ったほうがいいかもしれない。こういうものを両方合わせることによって、本当に地政学がわかる。『これ、単なるパワーゲームみたいだな』『何か軽いな』、あるいは『一種の陰謀論みたいだな』と思うのは、地政学を支えている目に見えない思想は何なのかという問題に踏み込んでいないからです。意外と問題は宗教と絡んでくるのです。」

あらゆるトピックがてんこ盛り、目からウロコの地政学

 本書は冒頭から末尾まで講義録のスタイルで著述しており、大学の講義を受けているかのような臨場感で読み進めることができます。

 地政学の古典中の古典、『マッキンダーの地政学』と『マハン海上権力史論』を引用しながら「講義」を進めていくのですが、地理的条件のほか、宗教や人種が及ぼす影響、政治家が占いを信じる理由、日本でテロが起きる可能性など、著者ならではのユニークな視点もギッシリ。

 また、「講義」の途中で早期教育(幼少期の教育)や錬金術、ギリシャ哲学など、地政学とは一見無関係な話題へ展開していくことがあるのですが、そのまま読み進めることで、本題に戻った時に「なるほど、そういう意味だったのか!」と腑に落ちる仕掛けが施されています。

 もちろん、地理的条件から「世界はつながっている」を実感できる、目からウロコの地政学も満載。

・カナダでは英語、フランス語に次いでウクライナ語が話されている理由
・トルコとロシアの緊張がアゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア(グルジア)に波及するリスク
・イラン、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルによる外交戦略と裏工作


 など、ヨーロッパや中東を主軸とした「マッキンダー視点」に加えて、西南戦争とアメリカ南北戦争、明治維新とのつながりを取り上げ、「日本史のif」も解説。

 佐藤氏はこう語ります。

 「仮に明治維新があと10年遅れていたとしたら、南北戦争によるアメリカの南北分断の痛みはかなり克服されていたから、アメリカが一丸となってやってきたかもしれない。特に米西戦争の後だったら団結力があったかもしれません。日本人たちは、アメリカ的なキリスト教はすばらしいと思ってしまったかもしれません。」

なぜ西南戦争で西郷軍が敗れたのか?
なぜ明治政府の軍事顧問に「お抱え外国人」がいたのか?
地政学の視点から見事に説明できるのです。


地政学で読み解く過去と現代の世界

 2021年8月15日、イスラム教スンナ派の武装組織タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧、西側諸国がてこ入れしていた政権が崩壊し、世界のパワーバランスに影響を与えました。

 この他にも、対立が激化する米中、勢力圏の再編が進む中東、混迷の中央アジア、ブロック化と理念維持の狭間で苦闘するEU、威嚇や挑発で緊張が高まる東アジア。世界は依然としてたくさんの火種を抱えており、どこで何が起こっても「対岸の火事」では済まされない状況にあります。

過去の人類は国家と世界の危機をどう切り抜けたのか?
今の状況をどう読み解き、向き合っていけば良いのか?


 読み込むほどに理解が深まり視野が広がる、地政学テキストの決定版とも言える一冊。現代を生きる者の基礎教養として、世界を動かす「見えざる力の法則」を知っておく必要がありそうです。

<書籍紹介>
地政学入門
著者 佐藤 優

世界を動かす「見えざる力の法則」、その全貌。地政学テキストの決定版!
地政学は帝国と結びつくものであり、帝国は国民国家を超える。
帝国の礎にはイデオロギーがあり、それは「物語の力」が核となっている。
地政学はナチスの公認イデオロギーとなっていたがゆえに封印されていた、危険な「物語」でもある。

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