キャリアデザインって何? 定義や重要性、設計方法などを紹介
ライフスタイルやビジネスの世界で、自分自身の将来を主体的に設計する「キャリアデザイン」。ビジネスパーソンをはじめ、多くの人にとって重要なものですが、その考え方ややり方を知らない人も多いのではないでしょうか。今回は、キャリア&人間関係コーチのずんずんさんに、キャリアデザインの重要性や設計方法などを教えていただきました。ぜひ参考にして、自分なりのキャリアデザインを作ってみてください。
{ 目次 }
- キャリアデザインとは
- キャリアデザインの意味や目的
- キャリア形成・キャリアパス・キャリアプランとどう違う?
- キャリアデザインはなぜ重要?
- 企業を利用してステップアップするという考え方が一般化してきた
- 内省を繰り返し将来に備えておく
- 自分にあった仕事や夢に向かっていくことが重要
- キャリアデザインの設計方法
- 自己分析から目標設定
- 計画立てから実行
- 評価から調整(改善)
- 6つのステップを繰り返す
- 社員のキャリアデザインを支援する体制を作るには
- 会社が社員のキャリアデザインを支援するメリット・デメリット
- 定期的な1on1を実施し、社員の目標を把握する
- キャリアデザイン研修・セミナーの活用
監修者・ずんずんさんプロフィール
元プロ外資系OL。著述家、キャリア&人間関係コーチ。大学卒業後、埼玉県にある日系事業会社に就職。激務の果てに「死ぬ前に丸の内OLになりたい」と転職活動を開始、ラッキーパンチで外資系投資銀行に採用される。その後「わい海外で働きたいねん」とカッとなり、シンガポールでグローバルIT企業の日本とアジア財務担当者として勤務し、数々のグローバルエリートと共に働く。在職中より、ブログや書籍の執筆、東洋経済オンラインやダイヤモンドオンライン等に記事を連載。その傍らコーチングを学び、現在は日本でキャリア&人間関係についてのコーチとして1000人以上のビジネスパーソンに恐怖を乗り越え行動する勇気をあたえるコーチングを行っている。
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キャリアデザインとは
キャリアデザインの意味や目的
キャリアデザインを行うにあたって、その意味や目的を理解しないままむやみに取り組んでもうまくいきません。まずはキャリアデザインを理解するために、意味や目的を解説してもらいました。
「キャリアデザインとは、自分の夢や目標に向かってどのようにキャリアを発展させていくかの『設計図』を作ることです。キャリアは仕事だけではなく、ライフスタイルも含まれます。人生の目的や自分の価値観を自己分析して作られた設計図は、自分が将来のキャリアを進むための道しるべのような役割を果たします。
例えば、大企業では部署をローテーションすることも多く、そのなかで自分が望んでいないキャリアを歩むこともあります。キャリアデザインというのは、会社の中のキャリアではなく、『会社を利用して自分のなりたいものになるために、次はどの会社・仕事がいいのか』と考えることです」(ずんずんさん・以下同)
キャリア形成・キャリアパス・キャリアプランとどう違う?
自分の将来を考える意味では、キャリアデザインと似た言葉として「キャリア形成」「キャリアパス」「キャリアプラン」なども耳にします。この3つとキャリアデザインには、どのような違いがあるのかを聞きました。
「『キャリア形成』はその職業に必要となるスキルを習得すること、『キャリアパス』は課長や部長など会社内でステップアップすること、そして、『キャリアプラン』は職業やビジネスにおける目標達成のための具体的な行動計画を立てることを指します。キャリアデザインのアプローチとしてこの3つがあるということになります。あまり多くはありませんが、今の会社で自分の望む仕事・役職を任されることもあり、キャリアパスがキャリアデザインと一致することもあります」
キャリアデザインはなぜ重要?
企業を利用してステップアップするという考え方が一般化してきた
働き方が大きく変わった現在だからこそ、しっかりとした計画が必要になってきます。キャリアデザインの重要性をお聞きしました。
「これまで当たり前だった年功序列という風潮や終身雇用制度が崩れたことで、一つの会社に長く務めるという形のキャリアも変化しました。今では転職が当たり前となり、会社を利用してステップアップしていく形が一般化してきています。自分らしい生き方を考えることが、今後ますます重要視されていくでしょう」
内省を繰り返し将来に備えておく
「キャリアデザインをするうえで、自己分析や目標設定を行い、自分でキャリアをコントロールしていくことが重要です。例えば、自分の望まない人事が出され、会社を辞めるか続けるのかを考える場面に立たされたとします。そんなときのためにも、『今、自分の興味のあるものは何だろう』『自分の価値観はどういうものだろう』と自問自答や自己分析を繰り返し、キャリアデザインをしっかり行っていかなければなりません」
自分にあった仕事や夢に向かっていくことが重要
「自分の興味や価値観にあった仕事を見つけることや、夢や目標に向かっていく『あなたらしいキャリア』が、昨今では重要視されてきています。
まずは自己分析を行うことで、自分の興味や価値観をより認識しやすくなります。ですが、自己分析はすぐに自分一人でできるものではなく、対話や質問によって自発的な行動を促す『コーチング』、個人のキャリア選択を支援するための面談『キャリアカウンセリング』などが必要になってきます。どのように自己分析を進めるにせよ、複数の人からサポートを受けることでより正しい自己分析ができるようになりますので、セミナーに参加したり、上司や同僚に相談するなど、複数の人に自己分析をサポートしてもらうことをおすすめします」
キャリアデザインの設計方法
キャリアデザインがどのようなものかわかったら、実際に設計図を作ってみましょう。ここでは入門として、キャリアデザインに欠かせない6つのステップを解説してもらいました。
ステップ1 自己分析
ステップ2 目標設定
ステップ3 計画立て
ステップ4 実行
ステップ5 評価
ステップ6 調整(改善)
自己分析から目標設定
「まずは、自分のスキルや興味、価値観などを認識する『自己分析』から始めます。そして、今行っていることと、やりたいことのギャップを認識してください。キャリアデザインを進めていく中で、『実際にやってみたけど、本当に自分がやりたいことではなかったんじゃないか?』と気付くこともあります。その場合は、ステップ1の自己分析からやり直すということになります。
また、気付く手段の一つに、副業があります。自分が興味のありそうなものをいきなり本業にするのではなく、試しに副業でやってみることで、本当に自分に合っているのか見極めることができます。
そして、認識した自己に基づいて、『目標設定』を行います。副業をする人は、今の仕事での目標設定と、副業がメインになったときの2つの目標設定が生まれる場合もあります」
計画立てから実行
「次に、目標に向かって具体的な『計画立て(アクションプラン)』を考えます。どうすれば実現できるのか計画を立てないと、先々の行動があやふやになってしまいますので、より具体的なものが求められます。
例えば、『将来的にCEOやCOOになりたい』と目標を立てたとしても、具体的に何をすればいいのか、どのような経験やスキルが必要なのか漠然としていて、わからないかと思います。まずは、目標に向かうために自分に何が必要なのか、情報収集を行います。そして、必要な経験やスキルは今の会社で得られそうなのか、そうでなかったらどうするべきなのかを考えていきます。
そうして転職も加味した中長期的で具体的なアクションプランを作り、それを年単位で『実行』します」
評価から調整(改善)
「実行後は、定期的にその行動の結果を分析し、問題点や改善点を見つけるなど、自分で『評価』を行うことが重要です。
次に、『評価』で発生した課題を踏まえ、計画を『調整(改善)』します。課題が浮かび上がったときだけでなく、定期的な調整が必要です。例えば、社会人になったばかりのときと、仕事を始めて数年経ったときとでは、年齢や経験も違い、それによって夢や目標が変わることがあるからです」
6つのステップを繰り返す
「キャリアデザインの設計方法は、このように6つのステップに分かれます。そして、この一連の流れでPDCAを繰り返します。実践においては、キャリアコーチングやキャリアカウンセリング、研修が有効です」
社員のキャリアデザインを支援する体制を作るには
社員のキャリアや能力、目標を明確にしてそれにあった仕事を与えることや、キャリアアップを支援することは、会社としても重要なことです。そのために、会社側ではどのような体制作りが必要なのでしょうか。
会社が社員のキャリアデザインを支援するメリット・デメリット
先ほど触れたとおり、社員が会社を利用してステップアップしていく形が一般化してきています。そのなかで、まずは会社が社員のキャリアデザインを支援するメリット・デメリットを聞きました。
「社員の仕事へのモチベーションが上がること、そして離職率を下げることができるのがメリットです。自己実現とやりたいことを仕事でフィットさせることで、社員は仕事にやりがいを感じ、また、転職をしなくても今の会社でも自己実現ができると考えます。スキルのある社員に長く働いてもらうことは、会社にとっても有益です。
一方デメリットは、研修やセミナー、またはコーチング研修など、社員のキャリアデザイン設計をサポートするための体制を作るのに、コストがかかることです。体制が整わず、スキル不足で行ってしまうと、会社側はきちんと社員の希望や意見を把握することができません。それによって、本人が望まない部署に異動させてしまったりすると、逆に離職率が高まるなどの事態を招く可能性があります」
定期的な1on1を実施し、社員の目標を把握する
「会社が社員のキャリアデザインを支援するうえでまず必要なのは、社員のキャリアデザインと会社の方針がミスマッチを起こさないようにすることです。そのためには、定期的な1on1(業務の進捗確認・業績評価)などにより社員のキャリアや能力・目標を明確化し、それにあった仕事のアサイン、研修やトレーニングの機会を作る必要があります。また、社員のキャリアアップのチャンスを提供するために、異動制度を整備することも大切です」
キャリアデザイン研修・セミナーの活用
「会社が資格を持つキャリアコーチやキャリアカウンセラーを呼ぶのも効果的です。セミナーや研修により、社員にキャリアデザインの重要性を知ってもらう機会を作ることができます。意識の高い社員は社外の研修やセミナーに参加するなどして、さらに自身のキャリアデザインについて考えることにもつながります」
ここまで、キャリアデザインについて学んできました。自分の本当にやりたいこと、実現したい夢に向かってやらなければいけないこと、障害になっているものをきちんと把握して、その実現のために計画を立て、結果を分析し、修正する。このステップが大切だとわかりました。自分一人だけでは難しいと感じたら、コーチングやセミナーを受けるのも有効な手段のひとつです。ぜひ、自分の輝かしいキャリアをデザインしてください。
(取材/執筆 瀧本充広)