“ブス”でもキャリアと結婚、両方成功できる!? 失敗しない戦略の立て方とは
ビジネスの成功を決める普遍的要因とは「ネットワークが良いこと」。大学入学や就職・転職はネットワークを手に入れる行動と言える。そして実は結婚もその1つだと考えたことはあるだろうか。
キャリアと結婚をテーマに、『ブスのマーケティング戦略』の著者、田村麻美氏、『20代で人生の年収は9割決まる』の著者、土井英司氏が結婚とキャリア、その成功の本質に迫った。
※本稿は、2019年6月19日開催のKADOKAWAビジネスセミナー「自分(ブス)のためのマーケティング戦略講座~資源不足でもキャリアと結婚に成功する方法」(講師:田村 麻美、土井 英司)の一部を再編集したものです。
【講師】
【ゲスト】
犬塚 壮志 カリスマ予備校講師。阿佐見綾香さんの夫。著書『感動する説明「すぐできる」コツ』
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対談冒頭、土井氏は語った。「先日行った婚活のためのセミナーは、バリキャリのアラサー美人ばかりでした。思わず説教してしまいましたよ。『なぜ、戦略的に考えないの?』と(笑)」
キャリアと結婚……互いに無視できないこの大きなテーマ。どれだけの人がうまくいっていると言えるだろうか?
もしかしてあなたは好きだけで結婚、好きだけで就職してはいないだろうか?
超難問!? 全ての出発点は自分を正しく知ること
キャリアでも結婚でもまずは自分の棚卸しと正しい査定、と田村氏は著書で語っている。「見た目」「経済力(仕事)」「学歴」「居心地(人柄)」「相性(個性)」の5つの指標を持つといいという。しかし、この自分を正しく査定することこそが、難しいのではないだろうか。
「そうなんです。誰もが自分のことは可愛いし、客観的に評価するのは難しい。かといって他人の評価もそうあてにはならないです。結婚でも就職でも理想の相手が自分を選びますか?という視点で考えて欲しいですね」(田村)
この「正しい自分の査定」の難しさは、個人にも限らないようだ。多くの企業のマーケティングに関わる阿佐見氏も指摘する。
「もったいないことに、企業の担当者が自分たちの会社や商品・サービスの価値に正しく気づいていないことはよくあります」(阿佐見)
聞こえに障がいを持つ阿佐見氏は、自身の就活をどう戦略的に考えたのだろうか。
「ジャーナリストになりたいと思っていた時もありました。でもスピード勝負の記者会見などに対応するには、自分の聴力では無理だなぁとも感じていました。なので、勝てない場所には、はなから行かなくていいと考えました。
就職活動の段階では、相対比較はあまりしなくていいし、自分を無理に差別化しなくていいと思うんです。それよりもするべきことは、自分の今もっているもので、どういったかたちで会社に貢献できるのかを考えるほうが大事だと思います」(阿佐見)
ではなぜ、電通だったのか?
「最終的には中にいる人の多様性に惹かれました。広告業界では、多種多様な業界業種のクライアントを担当させていただくので、適材適所で多様な担当者が必要になります。そのため多様性を尊重する風土ができやすいのだと思います」(阿佐見)
「そこ、大事ですよね。自分の持ってるものが不利にならないところを選ぶこと。業界・社風・組織があってるか。パフォーマンスと評価は別だし、優秀でも評価基準と合うかどうかがポイントだと思います。
僕も最初の就職先は合わなかったんですよ。でも次の会社ではあっていたし、評価された。
結局、独立した後も社風の合うところと仕事していますしね」(土井)
諦めきれない願望をパワーと目標にしよう
客観的に自分を査定する一方で、「ここだけは譲れない」という、諦めきれない願望みたいなものもあるだろう。それを「自分の本能」と受け入れることも大事、と田村氏。
「私の場合は、無意識に『ブスなんだけど、いつか結婚したい』という夢があったんですよね。それをどうにかして実現したかった」(田村)
「『△△だけど●●したい』と思ったら、それを諦めるんじゃなくて、それを目標に掲げちゃう。そうすると戦略が生まれるし、パワーになりますよね」(土井)
「私もパワーの源になる願望が2つあります。1つはコンプレックスの払しょく。私にも障がいがあるので、コンプレックスを持った人や、マイノリティの人の気持ちが分かるプランナーでありたい。
もう1つは親の誇りになりたいという気持ち。うちの親自身は明るいので何も気にしない人なのですが、親が周囲の大人から、障がいのある子がいて大変だと思われることは絶対に嫌だったんです」(阿佐見)
考えてみれば、誰もが完璧な条件を備えているわけではない。今持っている自分という資源をどう活かすか、どうやって行きたいところにたどり着くか、という戦略が必要になってくるのだ。
「戦略とは、「敵の最大の弱みに自分の最大の武器をぶつけること」(リチャード・ルベルト)。普通に正面から行ったら無理でも、弱いところを見つけてそこに行くとあっさり勝てるんです。
行きたいマーケットは、入りたい会社は、仲良くなりたい人は、何が欠けてる? 不得意?弱点?それを見つけて、そこに自分の強みをぶつけるんです」(土井)
ブスのための勉強戦略――学歴、資格、何をどう学ぶか?
では戦略の1つ、学歴や資格はどう考えればいいのだろう。
「振り返ると学歴は、ブスの保険でしたね。最悪、選んでもらえなかったことを想定して大学に行きました。ただ、就職を考えたときに、私の立教大学じゃブスは面接で落とされるなと気づいたんですね。学歴が突き抜けてない、面接でもパッとしない、じゃあ女性が少ない業界に行こうと」(田村)
「なるほど。相対的に自分の勝てるところに行くということですね。自分の欠点が弱点じゃなくなることが大事ですね」(土井)
年収アップ、ステージアップ戦略――どこで戦うか?
その後の田村氏の開業・執筆も非常に戦略的で、ランチェスター戦略を彷彿とさせる。
「本業の税理士業は基本、法律に守られているのですが、『どこで戦うか』は考えました。
真面目でがっつり、大きな企業を大手の事務所が軒並み顧問にしてるような、千代田区・港区は無理。ハナから除外しました。
今私のいる足立区は、同業の税理士は言い方は悪いですが、高齢の男性の方が割と多いんです。なので、女性というだけで目立つことができた...あと、本を書くのは夢でしたが、本業の税金関係はありふれているので、思い切ってもともと書きたかったブス本にしました」(田村)
「この、競争相手のいないところを狙う、という視点が大事ですよ。みんなと同じ感覚、この街のイメージならいかにもこの商売、でやっているとだめですよね」(土井)
ここでゲスト・阿佐見さんのご主人であり、元駿台予備学校カリスマ講師の犬塚氏も2年前の独立、起業した際に同じようなことを体験したと語っている。
「当初は『話し方』をメインテーマにビジネスを展開しようと思っていたのですが、そこは実はレッドオーシャンだったんです。そこで「説明スキル」だけに絞り込んで本を書いたらヒットして、いろんな方から仕事のオファーをもらえるようになりました」(犬塚)
「機能を絞り込むと、適用対象が広がる!という実例ですね」(土井)
構成:金田千和
【プロフィール】
田村 麻美(たむら・まみ)
1984年生まれ、税理士。 立教大学経済学部卒業後、同大学院で博士課程前期課程修了。早稲田大学ビジネススクール(MBA)修了。ブログ「足立区の女性税理士 田村麻美.com」が「税理士なのに面白い」と話題になり、昨年12月に初の書籍『ブスのマーケティング戦略』(文響社)を出版。
土井 英司(どい・えいじ)
出版マーケティングコンサルタント / ビジネス書評家/有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役/日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長。1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。日経ホーム出版社(現・日経BP社)を経て、2000年に世界最大のオンライン書店アマゾンの日本サイトAmazon.co.jp立ち上げに参画。2004年、有限会社エリエス・ブック・コンサルティングを設立。独立後は数多くの著者のブランディング、プロデュースを手掛ける。
阿佐見 綾香(あさみ・あやか)
株式会社電通 シニア・ソリューション・プランナー。早稲田大学卒業後、株式会社電通入社。戦略プランナーとして、化粧品・トイレタリーなど、大企業から中小企業まで数多くの企業のマーケティング戦略立案、事業・商品開発、リサーチ、企画プランニング、インナー改革プロジェクトなどに従事。