地方暮らし

第4回 四万十町の人口の現状

第4回 四万十町の人口の現状

 株式会社良品計画でソーシャルグッド事業部を管掌する長田英知さんの連載『ソーシャルグッドな地方暮らし』。第4回の寄稿では、四万十町がなぜ町への移住・定住を推進しているのか、四万十町の人口の現状についてご紹介していただきます。

<著者・長田英知さんプロフィール>
 東京大学法学部卒業。IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社、PwCアドバイザリー合同会社等で戦略コンサルタントとして、スマートシティやIoT分野における政府・民間企業の戦略立案に携わる。2016年よりAirbnb Japanに参画、同社執行役員として国内民泊市場の立上げに貢献する。2022年4月、株式会社良品計画に入社。現在、同社執行役員としてソーシャルグッド事業部を管掌。
 外部役職としてグッドデザイン賞審査委員、京都芸術大学客員教授等を歴任。著書に「ワ―ケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」」(KADOKAWA)、「ポスト・コロナ時代 どこに住み、どう働くか」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)他、多数。
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四万十町が人口減少している理由


 少子高齢化に伴う人口減少は自治体共通の課題ですが、四万十町は他の自治体と比べても高齢化が進んでおり、深刻な状況にあります。四万十町の人口は、1955年の41,912人をピークに減少を続けており、2015年の人口は18,162人、2020年は16,463人と、直近5年間でも約1割の人口減少となるなど、その減少スピードには歯止めがかかっていません。

 現在の人口流出入の状況が続いた場合、40年後の2060年の人口は5,879人となり、現在の約1/3にまで減少すると推計されています。人口減少が加速すると予想されている理由の一つが、全国平均よりもはるかに高い高齢化率です。

 2015年の四万十町における65歳以上の高齢者が占める割合は42.3%ですが、これは全国平均の26.7%と比較して約15ポイント高くなっており、約20年早く高齢化が進行しているといわれます。そして人口減少の一方で今後も高齢化率は上昇し、2045年には50%を超える見込みとなっています。

将来推計人口と高齢化比率の推移グラフ
将来推計人口と高齢化比率の推移グラフ


 四万十町の人口が1950年代という割と早い段階から減少している理由の一つとして考えられるのが、高度経済成長に伴う、都市部への人口流出です。これによりもっとも影響を受けたのが地域の第1次産業でした。

 1960年の統計において、第1次産業に従事する人の比率は6割を超えていました。しかし日本が高度経済成長期を迎える中、人々が都市での仕事を求めて移動した結果、1960~75年のわずか15年の間で四万十町の人口は約3割減少し、第1次産業に従事する人の比率も4割にまで落ち込みました。

参考:四万十町過疎地域自立促進計画(案) 平成28年3月高知県四万十町
https://www.town.shimanto.lg.jp/download/?t=LD&id=2923&fid=22228


 一方、四万十町の自然環境は、第1次産業の高度化や他の産業の発展を阻害する要因の一つとなっています。四万十町の民有林面積は約4万haにおよび、国有林を含めると、町土面積の実に87%を森林が占めています。森林が多いということは平地が少ないということを意味します。その結果、農業の大規模化が地理的に難しく、林野率の高い大正地域や十和地域では、零細な農林複合経営が中心となる、典型的な山村経済の構造となっています。また第2次、第3次産業も小規模のものが中心となり、大きな産業が育ちにくい状況となっています。

人口減少がインフラ維持にも影響


 四万十町では、人口減少に伴い、社会インフラや生活インフラの維持も難しくなっています。学校教育分野では、一定規模の集団による教育を推進するための環境整備を目指し、「第2期四万十町立小中学校適正配置計画」を令和元年7月に策定しています。その計画により休校となった校舎等の施設の活用については、今現在未定となっており、地域と協議のうえ有効活用を図るようにしています。

 また限界集落となっているエリアに居住する高齢者は、車に乗って買い物に行くことができず、バスなどの公共交通手段も限られているため、移動販売等により日常生活が支えられている現状となっています。

>>バックナンバー
第3回 無印良品の空き家活用の取り組み
第2回 高知県・四万十町と良品計画の提携
第1回 コロナ禍で変化していく新たなQOLとは

<著者 関連書籍>
ワーケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」
著者 長田 英知

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