地方暮らし

第5回 四万十町の移住定住促進の試み

第5回 四万十町の移住定住促進の試み

 良品計画の長田英知さんが連載中の『ソーシャルグッドな地方暮らし』。前回(第4回)の記事では四万十町の人口推移の状況についてご紹介しました。急速な高齢化と人口減少が進む四万十町の地域・産業を維持していくためには、地域の外からいかに人を呼び寄せ、地域に関わってもらうかがカギとなります。今回の記事では、町が移住定住促進のため、どのような取組を行っているのかについてのお話です。

<著者・長田英知さんプロフィール>
 東京大学法学部卒業。IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社、PwCアドバイザリー合同会社等で戦略コンサルタントとして、スマートシティやIoT分野における政府・民間企業の戦略立案に携わる。2016年よりAirbnb Japanに参画、同社執行役員として国内民泊市場の立上げに貢献する。2022年4月、株式会社良品計画に入社。現在、同社執行役員としてソーシャルグッド事業部を管掌。
 外部役職としてグッドデザイン賞審査委員、京都芸術大学客員教授等を歴任。著書に「ワ―ケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」」(KADOKAWA)、「ポスト・コロナ時代 どこに住み、どう働くか」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)他、多数。
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移住定住促進ための7つの施策


 四万十町では移住定住促進のための施策として、大きく以下の7つを行っています。

1)四万十町の魅力発信
2)空き家の調査・空き家情報の発信
3)お試し滞在施設
 【お試し滞在住宅、クラインガルテン四万十(滞在型市民農園)の管理運営】
4)移住定住住宅
 【中間管理住宅、移住支援住宅等の管理運営】
5)移住定住各種補助制度の整備
6)住宅取得等支援制度の整備
7)地域おこし協力隊の積極的な導入


 これらの施策のうち、良品計画の取組との関わりが深く、今回の記事で特に詳しくご紹介したいのが、空き家の有効活用です。人口の急速な減少に伴い、町内の空き家増加も大きな課題となっています。

 平成26年度の調査では、非木造・共同住宅を除く町の全住宅数は7,397棟ですが、その約13.5%にあたる1,003棟が空き家となっています。これらの空き家を有効活用することで、特に町外からの移住者を増やすための取組が、町にとって重要な施策となっています。

お試し滞在住宅で移住ハードルを下げる


 では町はどのような取組を行っているのでしょうか。まず町は地元の不動産会社と連携して、この10年間で227件の空き家を、空き家バンクに登録し、町のホームページを通じて情報提供を行っています。また町の移住相談員を配置して、移住を考えている方々の相談を受け付け、必要に応じて空き家バンクに登録されている物件の紹介を行っています。令和3年度に町に寄せられた移住相談は275件ですが、そのうちの200件は高知県外の居住者によるもので、幅広いエリアの方々が四万十町への移住に関心を寄せていることが分かります。

 一方、これまで四万十町と深い関わりを持っていない人がいきなり移住を決断するのにはハードルがあるのも現実です。そこで町が進めている施策が、お試し滞在住宅の整備による気軽な移住体験の提供です。

 お試し滞在住宅とは、数か月単位で地域の暮らしを体験できる移住体験施設で、現在、全国の自治体で同様の取組が推進されています。四万十町のお試し滞在住宅は、旧職員住宅を改修するなどして、窪川地域に1棟、大正地域・十和地域に各2棟整備されています。利用対象者は将来的に四万十町への移住を考えている人で、かつ利用期間中、周辺の地域住民と交流が持てる人となっています。利用期間は住宅によって異なりますが1か月から6か月まで、家賃は光熱水費別途で月1万円~2万円と破格の安さとなっています。

 そして移住定住を希望する方には、移住支援住宅・中間管理住宅の提供を行っています。
移住支援住宅は最長2年間、中間管理住宅は最長12年間の居住が可能で、家賃も月1.7万円~3.8万円と低額に抑えられています。現在、四万十町内には約40戸の移住支援住宅・中間管理住宅が整備されており、良品計画が四万十町と一緒に改修を予定しているのも、この中間管理住宅となります。

中間管理住宅というユニークな制度


 中間管理住宅は空き家を活用するユニークな制度であるため、最後にその仕組みについてご紹介したいと思います。自治体が移住のための住宅を準備する場合、自治体が所有する不動産を活用するか、民間が投資して賃貸住宅としているものをそのまま活用するケースが一般的かと思います。一方、中間管理住宅は、空き家を所有者から自治体が賃貸借で借りるとともに、その空き家の改修等を行政の予算で行う点が特徴となっています。

 四万十町の場合、12年間の賃貸借契約を結び、町が固定資産税相当額を所有者に賃借料として支払います。一方、町は自らの予算と補助金等で住宅改修を実施し、移住希望者に転貸を行います。所有者には12年後、改修によりきれいになった住宅が戻されます。また町の方は国・県の空き家対策補助金を活用できるため、少ない原資で空き家住宅の改修を行うことができます。

 こうした制度を有効活用することで、四万十町は町内の空き家ストックを優良化し、地域に住まう魅力を向上させようとしているのです。

>>バックナンバー
第4回 四万十町の人口の現状
第3回 無印良品の空き家活用の取り組み
第2回 高知県・四万十町と良品計画の提携
第1回 コロナ禍で変化していく新たなQOLとは

<著者 関連書籍>
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著者 長田 英知

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