管理職

管理職とは? 具体的な役割や求められるスキルを解説

管理職とは? 具体的な役割や求められるスキルを解説

 管理職は、役員と一般社員の間に立ち、会社の経営理念や経営方針を部下に伝え、現場の指揮管理をするなど、企業を支える大切な役職です。管理職という役職は、企業によってその定義や捉え方は異なり、主任・課長・部長など職種もさまざま。そこで、管理職の具体的な仕事内容や求められるスキルを、人材育成コンサルタントの内田和俊さんにお伺いしました。

{ 目次 }

管理職とは? その定義や捉え方
役員とのちがい、一般社員とのちがい
管理職の種類とは
管理職に求められる役割とは?
管理職に必要なスキルと向いている人
必要な3つのスキル
管理職に向いている人
向いていない人の特徴
良き管理職になるためのポイントは独自のスタイルを発揮すること

監修者・内田和俊さんプロフィール

人材育成コンサルタント・内田和俊
人材育成コンサルタント・内田和俊KADOKAWA SEMINAR(C)

1968年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。人材育成コンサルタント。1994年〜2002年、大学受験専門の英語塾を経営。教科指導のみならず、効果的な勉強方法やモチベーションアップの方法を指導。その中で、心理学やコーチングを学び、カウンセリング事業を始める。その後、そのメソッドを社会人向けに展開し、人材育成コンサルタントとして、主に大手企業を対象とした社員研修やコンサルティングを実施。1年間で約1万人に集合研修、500人に個人セッションを実施。 著書も多数。
≫内田さんの過去講演など詳細はコチラ

管理職とは? その定義や捉え方

 まずは、一般的な管理職の定義や役割について知っておきましょう。

 「企業によって管理職の定義は違うと思いますが、一般的には本部長や部長・課長・係長などがそれにあたります。私の定義では、『管理責任を有する部下がいる人』です。つまり、業務上責任が伴う部下のいない名ばかりの管理職は、管理職と定義しなくていいと思います。
また、業務上責任が伴う部下がいるという定義に基づけば、主任や現場リーダーといった立場の人ぐらいから管理職と定義してもいいと思います。実際に私が開催している管理職研修も、原則として部下がいる人に向けて行っています」(内田さん・以下同)

役員とのちがい、一般社員とのちがい

 役員や一般社員とは何が違うのですか?

 「役員とは、会社の経営に携わる人たちで、株主総会で選出されます。管理職も含め他の社員は、雇用契約に基づき、労働の対価として給与を得ているのに対し、役員は委任契約に基づき、経営の対価として、役員報酬を得ています。この点が、役員と管理職も含めその他の社員との最大の違いと言えるでしょう。
管理職は経営には携わりませんが、それぞれのチームに課されたタスクのまとめ役や責任者となります。一般社員は、それらに該当しない人たちです。プロジェクトに当てはめると、管理職はプロジェクトマネージャーで、一般社員はそのプロジェクトにおいて、それぞれの役割を与えられたメンバーというイメージです」

管理職の種類とは

 主任・課長・部長などいろいろありますが、どこからが管理職で、どのような種類があるのでしょうか?

 「実は、多くの企業において、役職と給与算出の基準にもなっている職群等級が異なっているのが現状です。また、各企業で管理職の名称とその役割も異なります。ただ、一般的な認識としては下記のような分類でよいと思います。比較的規模の小さな企業では、以下で述べる部長クラス以上は役員に近い立場でもありますので、意識としては経営側に立っていることもあると思います」

【管理職の主な種類】
・本部長(事業部長)
企業内で部長が複数いる場合、その中の代表となる人。事業部の最高責任者を指すこともあり、役員と兼務しているケースもある。

・部長(各事業部門の代表)
企業内のひとつの部署を代表する人。課長や係長、主任などを取りまとめる役割も担っている。

・次長(部長を補佐)
部門管理者の次の地位にあたる人。主に部長を補佐する役職で、課長よりは上の立場となる。

・課長(各課の代表)
課全体を取りまとめる、課の代表者。部長より下で係長よりも上の、中間管理職の立場でもある。管理職と言えば、真っ先に思い浮かぶのが、この課長というポジションであり、社内の要とも言える非常に重要な役職。

・係長(課長の下で係をとりまとめる役割)
業務を行う上で最小単位である係を代表する人。係は課の下に属するため、課長の下で主任や一般社員を取りまとめる。

・主任(現場のまとめ役)
年次によって自動的に昇進する名ばかり主任から新入社員や若手社員の指導員的な役割、小グループのリーダー的な存在の人までいて、もっともあいまいな役職。ただひとつ言えることは、管理職のファーストステップであるため、意識を変えることが求められる存在。

管理職に求められる役割とは?

 管理職は種類も多く、それぞれの立場によって求められる役割も異なると思いますが、大事なポイントは何でしょうか?

 「管理職の仕事は、指示命令を主に行いながら、プロジェクトや部下を管理していくことに尽きると思います。プロジェクト全体を見渡して進捗管理やリスクマネジメントを行い、成功や目標達成に導いていくことも、もちろん管理職の仕事です。

 予算の配分や人員の配置などもすべて管理職の業務ですし、的確な指示を出すことも大事です。そのためには部下の状況をしっかり把握しておく必要があります。『1on1』スキルを身に付け、部下がどんなことで困っているのかを知っておきましょう。本人の心身の状態だけでなく、ご家族の状況、ご両親の介護の問題など、周辺状況まで把握しておけば、プロジェクト進行中に予期せぬトラブルが起こったとしても、慌てずに対応することができます。また、日頃から、コミュニケーションをとりやすい環境を作ることも、管理職の大切な仕事です。

 管理職は、経営陣と部下の間に立って、防波堤のような役目も果たさなくてはなりません。それに加え、業務を管理するなかで部下に経営陣の理念を浸透させること、さらには、ルールやコンプライアンスの徹底も管理職の仕事です」

管理職に必要なスキルと向いている人

 プロジェクト全体の進捗管理から、部下のマネジメントまで、管理職の業務内容は多岐にわたります。ここでは管理職が業務を遂行する上で、必要なスキルと適性について見ていきます。

必要な3つのスキル

 「管理職に必要なスキルは『テクニカルスキル』『ヒューマンスキル』『コンセプチュアルスキル』の3つに分類されます」

・テクニカルスキル(業務遂行に必要な知識や技術)
業務を遂行する上で必要な、専門知識や技術のこと。販売職や接客業なら説明能力や商品の知識、事務職ならパソコンのスキル、IT技術職ならIT知識やプログラミング言語などがそれにあたる。

・ヒューマンスキル(人間関係を構築する力)
良好な人間関係を構築するための、コミュニケーション能力のこと。自分の考えを伝え、相手の考えを理解するという相互コミュニケーションを実現するスキルで、部下のモチベーションを管理する能力も含まれる。

・コンセプチュアルスキル(概念化能力=物事の本質を見極める能力)
複雑な物事を概念化して本質を理解する能力のこと。物事を冷静かつ客観的に俯瞰し、問題の本質を適確に理解するのに必要な能力でもある。

 「最近のマネジメントの潮流としては、3つのスキルのなかで『テクニカルスキル』については、管理職にとって、絶対に必要なスキルという見方をしていません。主任や係長など、現場に近い管理職の場合、テクニカルスキルは説得力や統制力に直結しますので、専門性の高い知識や技術はあった方がよいと思いますが、必ずしも抜きん出たテクニカルスキルがなくても、管理業務は行えます。実際に、企業によってはまったく畑違いの部署から管理職が異動してくるといったケースもあります。そうすることで、管理職の属人化を防ぎ、社内を活性化させるという狙いもあるようです。
 
 それよりも今は、ほかの2つのスキルのほうが重要視されています。『ヒューマンスキル』はコミュニケーションスキルで、『コンセプチュアルスキル』は全体を俯瞰するスキルです。今の時代の管理職には、部下一人一人が感じている疑問や不安を『1on1』などの場で、しっかり把握し、部下が納得できる解決策を提供できるコミュニケーション能力や、客観的な視点に立ち、冷静さと公平さをもって物事に対処できる能力が求められていると思います」

管理職に向いている人

 管理職に必要な3つのスキルをふまえた上で、どのような人が向いているのかを伺ってみました。

 「仕事にやりがいを求めている人や、他人の成長をサポートすることに喜びを感じられる人は管理職に向いているといえます。ひと昔前は、モチベーター的な熱い人が理想的なリーダー像のようにいわれていましたが、今はそうとも言い切れません。全体の業務が円滑に進むように人も物事も管理でき、中長期的な視野で物事を考えられ、トラブルにも冷静に対応できる人が、管理職として求められています。理想的なのは、心のなかは熱いけれど、それを表に出しすぎず冷静な対処ができる人。自分のやるべき役割を全うし、物事を俯瞰できる能力を備え、ロジカルに考え、公平な判断ができる人です」

・仕事にやりがいを求めている
・自分の役割をわかっている
・他人の成長をサポートできる
・物事をロジカルに捉えられる
・トラブルにも冷静に対応できる
・中長期的な視野で考えられる
・胸の内に熱いものを秘めながら表に出しすぎず冷静に対処できる

向いていない人の特徴

 「仕事はお金や生活のためだと割り切り、どちらかというと仕事を受動的にこなす人は、管理職にあまり向いていないかもしれません。ただ、性格がドライなタイプの人でも、自分の役割を明確に把握でき、やるべきことをきちっとできる人は、管理職に向いていると思います。逆に感情的な人は、管理職には向いていません。部下の側からしたら一番困るのは、上司の感情に業務が左右されることです。その他、部下が対応に困るという点では、言動に一貫性がない人、責任感のない人、他責の人(不都合なことや好ましくない状況が発生したとき、環境や他人のせいにする人)も管理職に向いているとはいえません」

・仕事に対して受動的
・すぐ感情的になってしまう
・責任感がない
・言動に一貫性がない

良き管理職になるためのポイントは独自のスタイルを発揮すること

 将来、管理職として会社の中枢を担う立場で活躍するために、身に付けておくべきスキルや、習慣、意識などについて伺ってみました。

 「『良き管理職になるためには、生まれ持った資質が必要』と思っている人が、意外と多いように感じています。ですが、リーダーシップやマネジメント能力はあとからいくらでも身に付けられます。大切なのは自分に合ったマネジメントスキルを使って管理するということ。また、管理職だからといって、すべてをひとりで背負い込んでしまうのもよくありません。全部を抱え込みすぎて、メンタルに不調をきたしてしまうケースもありますので、他の人に頼ることも必要です。

 例えば、先々のことを考えて具体的な目標を立てることが苦手だと思うのなら、その部分は上司に任せる。その他、情報収集や分析が苦手なら、その分野に長けた部下に任せるという方法もあります。そのような盤石なサポート体制を構築するためには、まずは自分の弱点を正直に開示することも大切です。自分そして部下の特性(強みや弱み)をしっかりと把握して、適材適所に人材配置を行っていくことも、管理職には求められています」

・最適なスキルを身に付ける
・自身に合った管理手法を持つ
・ひとりですべてを背負い込まない
・自分に足りない部分は適切に補完
・部下に対して自己開示を行う

 管理職といっても、企業によってその定義や捉え方、名称はさまざまです。しかしながら、チーム全体をまとめ、社内のプロジェクトを円滑に推し進めながら社員を育成し、目標を達成させるという大事な任務を担う職種であることには変わりありません。経営陣と一般社員の間に立ちながら、企業利益にも直結する業務を行う管理職の仕事は多岐にわたり、ビジネスパーソンとしてプロフェッショナルなスキルを常に求められる職務でもあります。現代の管理職に求められている役割を意識しながら、将来管理職を目指す人はぜひ参考にしてみてください。

(取材/執筆 稲嶺恭子 )

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