【第6回】リノベーションする移住体験住宅が所在する四万十町十和地域の歴史
良品計画の長田英知さんが連載中の『ソーシャルグッドな地方暮らし』。良品計画がリノベーションをプロデュース実施する予定の住宅は四万十町の十和地域に立地しています。そこで第6回目となる今回は、同地域の歴史と特徴、そして移住者誘致において目指すところについてご紹介をしたいと思います。
<著者・長田英知さんプロフィール>
東京大学法学部卒業。IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社、PwCアドバイザリー合同会社等で戦略コンサルタントとして、スマートシティやIoT分野における政府・民間企業の戦略立案に携わる。2016年よりAirbnb Japanに参画、同社執行役員として国内民泊市場の立上げに貢献する。2022年4月、株式会社良品計画に入社。現在、同社執行役員としてソーシャルグッド事業部を管掌。
外部役職としてグッドデザイン賞審査委員、京都芸術大学客員教授等を歴任。著書に「ワ―ケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」」(KADOKAWA)、「ポスト・コロナ時代 どこに住み、どう働くか」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)他、多数。
>>詳細はコチラ
十和地域の歴史と特徴
四万十町は2006年に、いわゆる平成の大合併により誕生した町ですが、その前は窪川町、大正町、十和村の2町1村に分かれていました。十和村、すなわち現在の十和地域は江戸時代から愛媛県宇和島市と四万十市中村をつなぐ結節点として、外部からの人々を受け入れる気風のある地域として栄えてきました。
十和地域では原木シイタケの栽培が盛んで昭和50年代には生産量が日本一となりました。現在では無農薬の栗やお茶などの栽培が盛んになっています。また近年は、その恵まれた自然環境を活かしたラフティング、キャンプ、ジップラインなどのアクティビティも盛んになっています。
そして今回、良品計画によるリノベーションを検討している住宅が所在する、十和地域の小野というエリアは、国から指定された四万十川流域の文化的景観の中でも重要な構成要素として位置づけられています。小野では現在、農業が主な産業となっていますが、これは第二次大戦前後に行われた灌漑工事によるものです。それまでは丘上の地形で水利が悪かったため、流域で伐採された木材を筏流しや管流しによって、河口の下田港まで運ぶ筏師や、楮を原料とした泉貨紙と呼ばれる和紙を製造する紙漉きが主な産業となっていました。
人口減少に歯止めがかからない十和地域
十和地域はこのように歴史と文化のある地域なのですが、高度経済成長期に入ってからは人口減少に歯止めがかからなくなっています。かつて7,500人ほどであった同地域の人口は2023年1月末時点で2,367人まで落ち込み、高齢化率も52%にまで上昇しています。また児童数が減少した結果、学校の統廃合も行われるといった状況が生じており、地域活性化のための移住者の誘致が喫緊の課題となっています。
2022年に四万十町全体で移住された方は187名となっており、十和地域も移住者にとって人気のエリアとなっています。移住者の中心は20~30代で、Uターンの方が全体の4割近くを占めています。地域おこし協力隊として同地に着任する方々の中には起業したり、地元の企業を引き継ぐケースなどがあります。例えば後継者問題に悩まれていた鍛冶屋のもとに、2015年に地域おこし協力隊として神奈川県から来た30代の方が弟子入りし、現在は独立して地域の後継者としてしっかり活躍されていたりします。
今回、良品計画が関わらせて頂く住宅リノベーションの目的は、四万十町の自然や文化に惹かれた移住者を受け入れる場を整えることで、産業振興と地域活性化に貢献するというところにあります。良品計画が関わることで一人でも多くの方に四万十町に興味を持って頂き、地域に関わって頂きたいと考えています。
>>バックナンバー
第5回 四万十町の移住定住促進の試み
第4回 四万十町の人口の現状
第3回 無印良品の空き家活用の取り組み
第2回 高知県・四万十町と良品計画の提携
第1回 コロナ禍で変化していく新たなQOLとは
ワーケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」
著者 長田 英知
ワーケーションをしてみたい人にも、個人の働き方を見直したい人にも、制度導入を検討している企業や地方自治体の人にも、ポスト・コロナ社会の働き方を考える上でおすすめの1冊。
>>詳細はコチラ